悪臭を放つキノコ「stinkhorn(スティンクホーン)」とは
キノコなのに一瞬違うものを想像してしまったという人は安心して良いでしょう。
このキノコの学名は「Phallus impudicus(ファルス・インプディクス)」といい、これはラテン語で『恥知らずな男根』(「Phallus=男根」「impudicus=恥知らず」)を意味しています。
なんともストレートな学名です。発見した学者もこれはもう他に言い逃れできんだろうと思ったのかもしれません。
英名も「stinkhorn(スティンクホーン:stink=悪臭、horn=角)」という名がつけられており、「horn」には英語のスラングで男性器や勃起の意味があることを考えると、こちらもかなりストレートな名前と言えるでしょう。
ちなみに日本での呼び名は「スッポンタケ(鼈茸)」です。
最大で25センチまで成長することがあるこのキノコですが、なんといっても特徴的なのは、オリーブ色のスライムのようなドロドロで覆われた帽子の部分で、これが非常に強烈な臭いを放っています。
実際にこの臭いは、腐敗した肉や下水のよう強烈な悪臭を放つことで知られています。
しかし、そんな悪臭をもちながらも毒はなく食用になり、特に成長前の幼菌と呼ばれる卵状のものはヘーゼルナッツのような味や、揚げることで魚のような味がするとされています。
身近なところでは中華料理で使われているようです。
特殊な生存戦略
今回撮影されたタイムラプス画像では、スッポンタケが地中から出現し、3時間で完全な大きさに急成長する様子を見ることができます。
しかし、この映像を撮るのは簡単ではなかったようで、撮影チームは3週間待ち続け、その大半の時間は変化がなかったようです。
映像からは成熟したスッポンタケが放つ強烈な臭いに引き寄せられ大量のハエが集まるのが確認できます。
ハエたちは10時間もの間、スッポンタケのスライムの部分を食べ続けました。
そしてハエたちは体内にキノコの胞子を摂取します。この胞子を排泄物として他の場所に撒き散らすことでスッポンタケは繁殖していくのです。
この戦略は、胞子を風に乗せて散布する他の多くのキノコ類とは異なっており、強烈な臭いとスライムが、胞子を風に飛ばすことができないスッポンタケならではの生存戦略として存在することがわかります。
そして数日後、スッポンタケは腐敗を始め、ゆっくりと地中に戻っていきました。
キノコ自体には男性器にちなんだ名前がつけられていますが、この腐敗して白くなり倒れている様は、「死体の指」と呼ばれているようです。