キノコの輪っかは妖精たちが踊った跡?
菌輪はキノコが環状に、あるいはその断片としての弧状に発生する現象であり、主に森林や草原、芝生や牧草地で見られます。
その多くは直径数十センチから数メートルのものが多いですが、菌輪を構成する菌類が生育し続ける限りは安定的に大きくなり、中には直径10メートル以上になるものもあります。
特に巨大なものですと、直径600メートル、菌輪の年齢が700歳にも達したケースがフランスで報告されています。
菌輪は草地の多い欧米諸国では決して珍しいものではなく、古くからその存在が知られてきました。
しかしその発生原理まではわからなかったため、国や地域ごとにユニークな解釈がなされています。
例えばイギリスの民話によると、菌輪はエルフやフェアリー、ピクシーといった妖精たちが輪になって踊り、草を踏み均した痕跡上にキノコが生え出たものだと伝えられています。
この捉え方は他の多くの地域でもメジャーなものであるため、菌輪は主に「妖精の輪(fairy ring、fairy circle)」と呼ばれるようになったのです。
スカンディナヴィアの民話でも、菌輪は妖精や魔女のしわざだと考えられており、妖精の踊りを意味する「älvdanser」と呼ばれます。
またドイツでは「Hexenring」、フランスでは「Rond de sorcière」と呼ばれますが、いずれも意味するところは「魔女の輪」です。
このように菌輪は妖精や精霊が踊った場所であることから幸運のしるしと見なされる場合もありますが、反対に「菌輪の内側は妖精や魔女の領域であり、その中に入ると災いが訪れたり、病気になる」などの不吉なしるしとして解釈されることもありました。
また菌輪は妖精の世界への入り口であり、別の場所に行き来できる「異世界への扉である」といった解釈がなされる地域もあります。
菌輪は良くも悪くも人々の様々なイマジネーションを掻き立ててきましたが、これで終わりでは面白くありません。
では菌輪は科学的に見ると、どのようなプロセスで形成されるものなのでしょうか?