菌輪はどうやって作られるのか?
考えてみれば、なんの口約束もしていないはずのキノコが綺麗な円環状に並べることはとても不思議です。
彼らはどうやって円環状に生え出ることができるのでしょうか?
まずもって、キノコとは菌類が胞子を散布するために作り出す器官(=子実体)であり、地上に姿を現した一部分だけのことを指します。
しかし菌輪の形成にとって重要なプロセスは、目には見えない地中で始まります。
菌類は地中において「菌糸(きんし)」と呼ばれる小さな糸のネットワークを伸ばしています。
ここで大切なのは菌類が菌糸を放射状に拡散することです。
つまり、菌類は自分を中心にしてその周辺に菌糸を広げることになり、拡散された菌糸の生育に伴って地上にキノコ(子実体)が姿を現します。
すると時間が経つにつれて古びた中心のキノコから死滅していきますから、周辺部分のキノコだけが後に残り、見事に菌輪が出来上がるのです。
菌輪はこの菌糸の拡散と死滅を繰り返しながら、どんどん菌輪の直径を大きくしていきます。
ただし菌輪が綺麗に形成されるには、その土地の気温や湿度、光が最適であり、土壌の栄養分などが均一でなければなりません。
そのため、キノコが生えるところにはどこにでも菌輪が現れるわけではないのです。
また菌輪は地上の植物にも影響を与えることがあります。
例えば、菌糸が土壌中に広がると、植物の成長に欠かせない有機物を分解してしまうため、地上の草が枯死する場合があります。
これによって円環状に草がなくなったり、草の色が周りに比べて変色するケースが見られるのです。
これと反対に、菌類の中には植物ホルモンの一種であるジベレリンを産生する種がいます。
それによって、今度は逆に植物の成長が促され、円環状に草が異常成長することもあるのです。
それを示したのが上の画像になります。
以上が菌輪の形成される科学的な仕組みです。
菌輪は日本でも湿度の高い梅雨時期などに、芝生のある公園や森林の開けた場所に現れることがあります。
見つけた際は、ぜひその神秘的な姿を楽しんでください。