ASMRには適性者の不安を解消する効果があると判明!
近年になってASMR(自律感覚絶頂)と呼ばれる音声コンテンツが人気を帯びています。
ASMRは「Autonomous Sensory Meridian Response」の略であり、日本語風に言えば「自律的な感覚の絶頂反応」となります。
絶頂反応というと性的な印象が強くなりますが、要は音によってピリピリ・ゾクゾクする反応のことを示しています。
聴覚を用いて感覚に何らかの変化を与える試みは古くから行われてきましたが、ASMR作品はそれら古くからの試みの延長線上にあるものと言えるでしょう。
現在、ネット上には「ささやき」「作業音」「自然の音」などさまざまなジャンルのASMR作品が投稿されており、人気は時間を経るごとに高まっています。
人気の根源となるのは「癒し」です。
高性能なマイクで録音されたリアルな立体音響によって「脳のうずき」を経験することで、精神に対してプラスの影響を与えることができると信じられているからです。
実際、過去に行われた研究によれば、ASMR作品には痛みを和らげたり、不安を取り除く効果があると報告されています。
しかし人によってはASMR作品は全く効果がなく、ただ耳障りな雑音にしか聞こえないとの報告も、同時に行われていました。
そこで今回、ノーサンブリア大学の研究者たちはASMR作品が医学的な効果があるかどうかを確かめるために、36人のASMR経験者と28人のASMR未経験者を集めて、実際にASMRに不安解消効果があるかを確かめることにしました。
なお、ここで言うASMR経験者とはASMR作品を視聴して「脳のうずき」をはじめとしたピリピリ・ゾクゾクするような感覚を感じた経験がある人を言います(自己申告)。
実験にあたってはまず、被験者たちの性格特性や不安を調べる心理テストが行われ、次いで『YOUTUBE』に投稿されているさまざまなASMR作品を視聴してもらい、最後にもう1度、不安レベルを確かめる心理テストが行われました。
結果、ASMR作品はASMR経験者に対して、不安を減らす効果があった一方で、ASMR未経験者には効果がないことが判明します。
この結果は、ASMR作品を用いた不安解消は、ASMRに対して適性がある人に限定されることを示します。
ではASMRに対して適性がある人とはどのような特性を持っているのでしょうか?
研究者たちが参加者たちの性格を分析したところ、ASMRの経験者たちは不安が高い状態にあることが判明しました。
この不安には、状況によって生じる「状況不安」と、もともとの人格によって生じる「特性不安」の両方が含まれていました。
またASMRの経験者たちは未経験者に比べて、神経症的な傾向が強いことも示されました。
ここで言う神経症的傾向とは病的な精神状態ではなく、ストレスを受けた時に落ち込みやすかったり、逆に衝動的になったりする、感情や情緒面での不安定さを意味します。
つまりASMRを「脳のうずき」として感じる適性がある人は、不安を現に抱えているか、性格的に不安を感じやすい人だったのです。