マイナス50℃でも死なない耐寒力!
アオナガタマムシ(Agrilus planipennis)は、北東アジアを原産とする甲虫で、トネリコの木を主食とします。
メスはトネリコの樹皮の隙間に産卵し、幼虫は樹皮を食べて約1〜2年で成虫となります。
自生地では数の密度も低く、自分たちのすみかである木に被害を与えることはしません
ところが、外来種として侵入したヨーロッパや北アメリカでは、その地に自生するトネリコの多くを破壊しています。
ちなみに、英名のエメラルド・アッシュ・ボアラーとは”トネリコに穴を開けるエメラルド色の者”の意です。
成虫はこちらの画像のように、トネリコの樹皮を剥いだり、穴を開けたりします。
北米のミシガン州とオンタリオ州南西部には1990年代後半に侵入し、生態系と経済に大きな影響を及ぼしました。
以前の研究で、この地のアオナガタマムシは、マイナス30℃の温度まで耐えられることが示されています。
しかし、それ以上の耐寒性を持つ一群が今回、カナダ中東部マニトバ州ウィニペグにて発見されました。
ウィニペグに住む一群は、2019年に同地を襲ったブリザードに耐え抜いていたことがわかったのです。
そこで研究チームは、アオナガタマムシがどれほどの寒さに耐えうるか、調査を開始。
まず、オンタリオ州バリー周辺からアオナガタマムシを採取し耐寒テストをしたところ、すべての個体がマイナス28℃前後で凍結し、死んでしまいました。
一方、マニトバ州ウィニペグで採取した一群は、平均マイナス46℃まで耐え抜き、そのうちの何匹かはマイナス50℃でも死ななかったのです。
同チームのブレント・シンクレア(Brent Sinclair)氏は、こう述べています。
「バリーは現在、オンタリオ州でアオナガタマムシが採取できる最南部の場所で、その耐寒性は10年前にロンドンで実験した結果と同じです。
ところが、それより北部にいるウィニペグの個体群の耐寒性は信じられないものでした」
彼らは血液に、不凍液として機能する非常に多くのグリセロールを含んでおり、血液というよりゼリーのようだった、と他の研究員は指摘します。
では、ウィニペグのアオナガタマムシたちは、いかにしてこれほどの耐寒性を獲得したのでしょうか?