政府の機密情報が論文査読を止めてしまった真相
事の真相は、当然ながら米政府が星間天体に関する情報を隠蔽したかったというわけではありません。
重要なのは火球という現象を検出するセンサーのいくつかが、米国防総省の管轄下で運用されているという点なのです。
火球とは、隕石の空中爆発現象ですが、この検出には国防総省の空中における核爆発の監視システムと技術が共有されています。
つまり地球に飛来した火球の、速度計算における許容誤差などの検証には、国防総省の保有するデータが必要だったのです。
そこで、この論文は根拠とするデータの信頼性を確認するため、政府機関へと渡されました。
ところが、論文は複数の官僚たちの間をたらい回しにされ、最終的にUSSCの主任科学者ジョエル・モーザー(Joel Mozer)博士のデスクに届くまで、3年もかかってしまったのです。
そして2022年3月1日付けでやっと、論文の正当性が認められたのです。
下はUSSCが4月6日にTwitterで公開した、今回の研究に関するUSSCの確認書類です。
USSC副司令官のジョン・ショー中将の署名のもと「NASAに報告された速度推定が星間軌道を示すのに十分正確であることを確認した」旨が記載されています。
6/ “I had the pleasure of signing a memo with @ussfspoc’s Chief Scientist, Dr. Mozer, to confirm that a previously-detected interstellar object was indeed an interstellar object, a confirmation that assisted the broader astronomical community.” pic.twitter.com/PGlIOnCSrW
— U.S. Space Command (@US_SpaceCom) April 7, 2022
論文の報告の正当性が認められたことで、今後、科学者たちは地球に初めて到達したかもしれない太陽系外の物質の捜索を検討しています。
上空で爆散し、パプアニューギニアの海に飛び散ってしまった小さな隕石の欠片を探すというのは、ほぼ不可能に近い作業ですが、それでも何らかの痕跡や元素を回収できる可能性はあります。
観測史上初めて地球に落下した星間天体の破片なら、それをするだけの価値はあるのでしょう。
今回の一件は、蓋を開けてみれば、政治上の事務処理に巻き込まれたかわいそうな論文の話でしたが、それも含めてなんだかSF映画の序章のようにも思えますね。
どこかの海底に眠る星間天体の欠片には、一体何が含まれているのでしょうか?
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