心が安らぐのは「感情の調節機能」を借りているから
なぜ自殺念慮と自傷行為が心の痛みを和らげるのか?
研究者たちは、この奇妙な心理の背景には「人間に備わった心の調節メカニズム」が潜んでいると考えています。
人は生きていく過程でさまざまな状況に直面し、そのたびに感情を刺激されます。
しかし全ての刺激に対して感情を剥き出しにすることは、集団生活を不可能にします。
たとえば狩りにおいて獲物を見つけただけで喜びのあまり叫んでしまったり、捕食者が近くに迫ったときに泣きわめいてしまえば、自分だけでなく集団の利益を棄損します。
そのため人間には、自らの感情を調節する機能が備わっています。
研究者たちは、自殺念慮や自傷行為は恐怖や痛みといった命にかかわる緊急事態を発生させるため、心の痛みに構うヒマを無くすような調節機構が働くと考えています。
つまり、心の痛みを肉体の痛みや死の恐怖で流してしまうわけです。
問題は、少なくない人々がこの調節機構の「中毒」になってしまうという点にあります。