腹部のミールワームと共生する「昆虫スーツ」
この体全体を覆うスーツの腹部には、ドーム型のテラリウム(飼育器)が埋め込まれています。
その中では複数のミールワームが飼育されており、人間から排出された熱と湿気が供給されるようになっています。
さらにテラリウムの中には、食料として廃プラスチックが投入されています。
つまりミールワームは人間の体温と人間がつくり出した廃プラスチックで成長・繁殖していくのです。
荒廃した世界には廃プラスチックもたくさん転がっていることでしょう。
そんなゴミを利用してミールワームを育成し、人間は成長したワームをスーツから取り出して貴重なタンパク源として摂取するわけです。
そのためこのミールワームは、人間に「食料」と「廃棄物問題の解決」という2つのメリットを提供してくれます。
まさに人間とミールワームの共生が昆虫スーツによって可能になっているのです。
ちなみに、昆虫スーツのプロトタイプは、2020年11月に英国の北に位置するデンマーク領フェロー諸島で実際にテストが行われました。
このテストではかなり寒い環境だったにも関わらず、スーツ腹部の飼育器に入れらたミールワーム200gは1時間あたり3~5mgのポリスチレンを分解しすくすくと成長しました。
100匹のミールワームと共生したケースでは、1日で39mgのポリスチレンを分解できたようです。
ここからは本来ミールワームが育成するには過酷な環境であっても問題なく生存可能なことや、廃プラスチックを食べて育成可能なことがわかります。
ポストアポカリプス的な世界における実用性はまだ不明ですが、人間との「共生」というテーマについては見事に達成したと言えるでしょう。
その証拠に、優れた教育的アイデアを表彰する「Design Educates Awards」のユニバーサルデザイン部門では、このアイデアが2022年の銀賞を受賞しました。
ちなみに開発された昆虫スーツは、雨風や放射線、空気中の病原体に対する防護機能が備わっており、過酷な環境にも対応できるのだとか。
ちょっと気持ち悪いですが、文明崩壊後の世界ではこうしたものに頼って生きていかざる負えなくなるのかもしれません。
廃プラスチックを食べるミールワームは他にいくつか研究報告があります。
実際発泡スチロールを食べる様子なども公開されているため、虫が苦手でない方は下の記事も参照してみてください。