エイに刺激を与える新たな取り組み
同水族館のロウェナ・ケネディ(Rowena Kennedy)氏は、今回の取り組みについて、「私たちはサッカーワールドカップの開幕に合わせて、新しいエンリッチメント(動物福祉の向上)プランを導入することにしました」と話します。
そこで考案されたのが、ボールを使った水中サッカーです。
まず、穴の空いたボールの中に大好物の魚を入れて、水槽内に落とします。
野生のエイは、生き物が発する電場から獲物を探すという特殊な能力を駆使して採餌しますが、ここでは視覚と嗅覚に頼ってボールの中の餌を追いかけます。
エイはドリブルしてボールを転がしたり、仲間との間で何度もパスを回すことで、穴から餌が落ちることを学習します。
つまり、これはボールを転がして遊ばせる単純な目的ではなく、エイに刺激を与えながら、自然な採餌行動を促すエンリッチメントの一環なのです。
ケネディ氏は「エイは知的な生き物なので、仲間と協力しながら問題解決をさせるなど、彼らにとって楽しく刺激となるような方法が重要でした」と話します。
取り組みを開始して以来、エイたちのプレイスキルは徐々に上達し、今では独自の水中サッカーを楽しんでいるようです。
エイはサメと同じ軟骨魚類のグループに属し、約1億5000万年前のジュラ紀にサメの祖先から派生して進化しました。
サメとは違って絨毯のように平べったいため、海底での生活に適しています。
目は体の上側に位置しますが、口や鼻腔、エラは体の下側にあるため、海底を這うようにして餌を探す姿がお馴染みです。
エイは今のところ、世界で600種以上が確認されており、最も大きなオニイトマキエイ(通称・マンタ)では、横幅9メートル、体重3トンにも達します。
同水族館では現在、6匹のエイがプレイヤーとして、日々の水中サッカーに熱中しているようです。