愛する妻の記憶を喪失。ハネムーンをもう一度
しかし、2016年9月のあの朝に、5年間の甘い思い出は全てアダムの中から消え去ってしまいました。アダムが病院で検査を受けていたとき、彼にとって唯一信頼できる人物は、彼の「母親」でした。
アダムの母は、アダムがラケルと恋に落ち、結婚した事実を伝えます。そして、彼らは病院内でもう一度、出会った頃のようなデートを重ねます。カフェテリアでサンドイッチを食べながら、お互いのことを知ろうと色んな話をしました。
「もし自分たちが夫婦だったら、キスしてもいいんだよね?」と尋ねるアダムに、ラケルは「そうよ。この人は、まぎれもなく私が結婚した男の人よ」と微笑みました。
しかし、事態はすべてポジティブな方向に向かってはいませんでした。アダムが別れを切り出したこともあります。アダムはさらに、「僕は君に惹かれていない。全く魅力を感じないんだ」と伝えたことさえあります。
それを聞いたラケルは、幸せだった頃のアダムが戻ってくるのをただ祈ることしかできませんでした。
そして、あの朝から3ヶ月が経った2016年12月のある日、目を覚ましたアダムは、突然ラケルに対して懐かしいトーンで話しかけ、3年前のデートで起こった出来事について謝りはじめました。
「私が誰だかわかる?」ラケルはすかさず尋ねます。
「僕のラケルをどうして忘れられるんだい?」アダムは答えます。
「ああハニー!あなたに伝えなければいけないことがたくさんあるの!」ラケルは喜びの声をあげます。
それからしばらくが経ち、現在アダムは多くの記憶を取り戻しています。しかし、ラケルとの結婚式など、今でも戻ってこない大切な思い出もあります。
医師たちは、アダムをテストするためにMRIやCATスキャンなどあらゆる手を尽くしましたが、2度目の記憶喪失の原因はいまだにわかっていません。
しかし、2人は未来を見据えています。3人のうち2人の子どもがすでに親元を離れたため、2人は「2度目のハネムーン」を計画しています。
「私たちの結婚は困難とチャレンジの連続でしたが、その全てに打ち勝ってきました。そのおかげで私たちの幸せは、前には味わえなかった新たな段階に達しています。この事件で私の人生が大きく変わってしまいましたが、私はこれが “素晴らしき災い(beautiful disaster)” であると信じています」とラケルは語っています。