過去でなんでもできるがタイムパラドックスは起こらない
新たに行われた研究はタイムマシンの作り方を発表しているわけではありません。
代わりに、開始と終結が繋がっている閉じた世界線(時間的閉曲線)で自由意志にもとづいて行動した場合の、世界線に与える影響について数学的な解明を行っています。
アインシュタインの方程式によれば、閉じた世界線の存在はタイムトラベルの可能性へとつながります。
そのため閉じた世界線での人間の自由意志を数学的に解明できれば、タイムトラベルに付随する祖父殺しのパラドックスを理解することが可能です。
結果、閉じた世界線(時間的閉曲線)は非常に複雑なシステムを構築可能であり、タイムトラベルでも自由意志による選択が可能だと判明します。
(※より専門的には「時空間連続体は任意の数の決定論的プロセス(運命)を内包できる」となります)
ただし同時に、閉じた世界線やタイムトラベルがどんな選択をしても、世界の出力が固定されている限り、タイムパラドックスは起こらないことも明らかになりました。
例えば、もしある人間が過去に戻って新型コロナウイルスの最初の感染を阻止したとしても、新型コロナウイルスは別の感染者を通じて感染をはじめるため、結局は世界的なパンデミックは防げないことになります。
もし未来が変わってしまった場合、そもそもタイムトラベラーが過去へ行く動機自体が失われてしまいますが、ここではタイムトラベラーは過去に行って感染を阻止するという動機も失われないため、タイムパラドックスは回避され続けます。
研究者たちは「タイムトラベラーは過去で好きなことを自由に行えますが、常に調整の力が介入して、パラドックスが回避される」と結論しています。
数学的な話ではありますが、ドラえもんのエピソードなどを思い出すと、過去にタイムスリップして未来を変えようとした行動が逆に裏目に出て、変えたかった未来に繋がってしまう、なんて展開が描かれているので、人間が自由意志で行動しても未来が変わらないという状況はイメージしやすいかもしれません。