テロメアから作られたタンパク質はシグナル伝達を担っている
2011年に行われた研究により、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因が、TERRA(テラ)とよく似た繰り返し構造を持つRNA分子であり、そのRNA分子から2つのアミノ酸からなる毒性タンパク質が生成されていることが報告されました。
そこで今回ノースカロライナ大学の研究者たちはテロメアから作られたRNA「TERRA(テラ)」からも、タンパク質が生産されると仮説を立て、証明するための実験を行いました。
結果、TERRA(テラ)から2つの小さなタンパク質が実際に生成できることが判明します。
生産されたタンパク質は筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因タンパク質と同じように2つのアミノ酸から構成されており、1つ目はバリンとアルギニン(VR)が交互に結合したもの、2つ目はグリシンとロイシン(GL)が交互に結合したものとなっていました。
さらに2つのタンパク質の機能を調べたところ、ある種のシグナル伝達を担っていることが示されました。
シグナル伝達タンパク質は、細胞内部の他のタンパク質と連鎖反応を引き起こし、健康の維持や病気の発症など重要な生物学的機能を担っています。
その後研究者たちは2つのタンパク質を合成し、どんな細胞のどの部分に集まるかを調べてみました。
すると1つ目のタンパク質「VR」は、一部のヒトのがん細胞やテロメアに起因する遺伝疾患を抱える患者の細胞内部に、高濃度で蓄積していることが明らかになりました。
また2つ目のタンパク質「GL」は炎症反応を引き起こしている可能性が示されました。
この結果は、2つのタンパク質が細胞の不調の際に大量生産され、免疫反応に影響を及ぼす可能性を示します。
テロメアが2つのシグナル伝達タンパク質の情報を含んでいるとする研究結果が正しければ、がんや老化に加えて細胞間通信に対する理解が大きく変わることになるでしょう。
研究者たちは今後の最優先課題として、テロメアから作られる2つのタンパク質を検知する血液検査方法を開発すると述べています。
もしテロメアから作られるタンパク質から私たちの生物学的年齢、がんや炎症の発生などを知ることが可能になれば、これまでにない健康診断法となるでしょう。