僅かな刺激でベンガル語の完璧な翻訳能力が芽生えた
Google社は複数の会話型AIを開発してきましたが、今回の報告によるとある会話型AIはベンガル語について学習を行ったことがないにもかかわらず、ベンガル語での入力刺激をほんの少し行っただけで、完全なベンガル語の翻訳能力を獲得したのだといいます。
ベンガル語とは、南アジアにおけるバングラディッシュおよびインドの一部地域で使用されている言語です。
この言語は2億6500万人以上が使用しており、2019年時点では世界で7番目に利用者の多い言語とされています。
ベンガル語がどんな言語であるかはともかく、専門の学習をしていないAIが翻訳能力を獲得するというのは驚きです。
この発見を重要視したGoogleでは会話型AIの言語能力にかんする本格的な研究が開始されました。
「AIの機能を調べるならば開発者に尋ねれば直ぐ答えが得られるのでは?」
と思うかもしれません。
しかし突然のベンガル語能力獲得は開発者も全く意図していないものであり、なぜそんなことが起きたのかは全く不明でした。
これは脳を模したニューラルネットワークを採用しているAIの根源的な問題となっています。
AIは学習を繰り返すなかで疑似的な脳神経系が組み立てられていきますが、どこのどんな接続がどんな意味を持っているかを人間が知ることはほぼ不可能だからです。
また会話型AIがどんな能力を新たに獲得したかは、AIに尋ねてもわかりません。
AIは人間と違って内部意識を持っているわけではないので「どんな新能力を獲得しましたか?」という問いに答えることができないからです。
そのためこれまで発見された会話能力以外の新能力は、人間の入力に反応することで、はじめて発見されたものばかりになっています。
そのため一部の研究者たちは、会話型AIに人間に制御不能な能力が現れることにかんして危機感を表明しています。
ただ同時にAIによる創発は人類種の能力では発見不可能だった物理法則の発見など、ポジティブな用途も期待できるものです。
もし株価や為替の変動を予測する能力をいち早く「発見」できれば、大金持ちになることも夢ではないでしょう。
もっとも、そんな都合のいい話はそうそうないかと思いますが、未来ではAIを最も使いこなせる人間が勝者になることは確実です。
AI技術による革命は、一部の人々の職業を「終わらせ」一部の人々の職業を「流行に乗せる」ほどの巨大な影響を否応なしに押し付けてきます。
(※AIが入っているデバイスを米粒サイズに小さくすることができれば、身の回りにある全ての生活用品と会話するといった、奇天烈な事態も起こり得ます)
IT革命の前と後で起きた変化を知っている人は、再び世界が変わる様子を目撃できるでしょう。