会話型AIは規模が拡大していくと突然新規能力に目覚める
皮肉なことですが現在研究者たちがchatGPTなどの会話型AIに対して最も興味を抱いていることはAIたちの「会話能力」ではありません。
会話型AIの元々の目的が人間と会話することなのは確かですが、ここ数年の研究によって会話型AIたちに会話能力以外の能力が存在することがわかってきたからです。
たとえばchatGPTを対象にした調査では、IQテストや数学の計算問題を解いたり、プログラムのコーディングを行ったり、PCのOSとして知られる「LinuX」に成りすますように頼むことが可能であることがわかりました。
このような能力は会話型AIを作った開発者も想定していないものとなっています。
以前に行われた研究によれば、新しい能力は会話型AIの規模が拡大していくと突然獲得される傾向があると示されており、AIに一種の「創発」が起きていると考えられました。
創発とは「システムの量的な拡大が質的な変化をもたらすこと」と定義されており、小規模AIを外付けしていくだけでは達成できない現象であると考えられています。
このような創発は人間の子供でよく観察されます。
たとえば子供にヒトの顔を描く課題を与えた場合、1歳児や2歳児は顔だと認識できないような線を描きますが、3歳になると突然、大人がみても顔だと認識できるものを描き始めます。
このとき子供たちにあらかじめ顔を描く訓練をしておく必要はありません。
子供の脳が成長して規模がある特定のしきい値を超えると「顔を描く能力」が突然獲得されるからです。
子供の成長はこのような創発の繰り返しと言ってもいいでしょう。
しかし高度な会話型AIでは創発の起こる規模も大きくなるようです。