シリカエアロゲルとガラスを組み合わせて頑丈で断熱性の高いレンガを作る
以前から研究チームは、高い断熱性と耐久性を兼ね備えた建材を開発したいと考えていました。
そこで着目したのが、「エアロゲル」です。
エアロゲルとは、「ゲル骨格を保ったまま内部の液体を気体に置き換える」という課題に挑戦した構造体です。
体積の9割以上が気体であり、極めて軽く、高い断熱性を持っています。
このエアロゲルにはいくつかの種類が存在しますが、二酸化ケイ素(シリカ)微粒子で構成されたものを「シリカエアロゲル」と呼びます。
シリカエアロゲルは、先ほどの特徴に加えて、高い透明性や化学的安定性を備えています。
シリカエアロゲルはほとんど空気からできているため、外見が半透明であり、光をいくらか透過してくれるのです。
そして研究チームは2017年に、このシリカエアロゲルを建築用レンガに直接注入した「エアロブリック」を開発しました。
ただし、このエアロブリックは市販の断熱レンガを利用したため不透明であり、シリカエアロゲルが持つ高い透明性を生かせていませんでした。
そこで研究チームは今回、ガラスレンガに半透明のシリカエアロゲルの粒子を注入した、「エアロゲル・ガラスブリック」を開発しました。
このエアロゲル・ガラスブリックは、ガラス板とシリカエアロゲルの層がサンドイッチのように重なっており、その内部では、合成樹脂の一種であるエポキシがスペーサーやシーリングとして使用されています。
この構造により、エアロゲル・ガラスブリックは、強度・断熱性・光透過性を兼ね備えたレンガとなりました。
実際、エアロゲル・ガラスブリックの熱伝導率は、53 mW/(m·K)であり、研究チームは、「市場にあるレンガどころか、技術文献に見られるレンガの中で最高の断熱性能である」と述べています。
またエアロゲル・ガラスブリックの圧縮強度は約 45 MPaであり、「市場で入手可能な粘土で作られた断熱レンガよりも数倍高い圧縮強度」だと報告されています。
壁一面をエアロゲル・ガラスブリックに置き換えても強度に問題はなく、太陽光で室内を照らしつつ、暖房費を節約できます。
さらに半透明なのでプライバシーの保護にも役立ちます。
研究チームは、これらの特性から、図書館、博物館、オフィス、体育館、多目的ホール、住宅、病院、動物園、温室、高層ビルなどに導入できると考えています。
ただし、従来のエアロブリックと比べてかなり高価になるという欠点もあるようです。
現在研究チームは、エアロゲル・ガラスブリックの特許を申請中であり、本格的な市場参入に向け、産業パートナーを探しています。