化合物「アズレン」とは?
アズレンは、10個の炭素原子と8個の水素原子からなる、C10H8の分子式を持つ炭化水素です。
似たような構造をもつ他の炭化水素としては、原油に含まれ、石油化学における基礎的化合物の1つであるベンゼンや、防虫剤で有名なナフタレンなどが挙げられます。
ベンゼンのような炭素が環になるように結合したものを炭素環と呼び、こうした環が1つの辺を共有して結合したものを縮合多環炭化水素と呼びます。
アズレンは縮合多環炭化水素の基礎成分35種の1つで、炭素環の炭素が7つと5つという異なるサイズでくっついたユニークな構造を持っています。
アズレンの歴史は古く、その発見にはハーブの「カモミール」が関わってきます。
カモミールの花から得られる精油の蒸留は古くから行われており、15世紀にはその精油が鮮やかな青色を示すことが知られていました。
そして1863年、イギリスの調香師がこの鮮やかな青い成分だけを単離(混合物の中から特定の成分や物質を取り出すこと)することに成功し、その物質に「アズレン」という名前をつけたのです。
名前の由来は、この鮮やかな青色に由来しており、スペイン語で青を意味する「azul(アズール)」から取られました。
語尾の「-ene」は化合物の命名規則によるもので、炭素の二重結合を含む場合に付けられ、縮合多環炭化水素の基礎成分は全て語尾に「-ene」がつけられています。
そのため「azul(アズール)」の語尾に「-ene」をつけて、アズレン(Azulene)という名前になったのです。
アズレンの合成は現在でも難しい技術であるため、単価は250mgで1万2000円程度(2023年9月現在)と比較的高価で取引されています。
アズレンはユニークな環状構造を持つことから、他の多くの環状炭化水素とは異なる特性を持っています。
このアズレンの基本構造を基にして生成される化合物を「アズレン誘導体」といいます。これらの誘導体は、アズレンの特徴的な構造を維持しつつ、異なる性質や機能を持つことができることで注目されています。