抗がん活性もある!?アズレンが持つ性質と効果
アズレンはその化学的な性質から、さまざまな効果や用途で注目されています。
まず、アズレンには体内の炎症を抑制する抗炎症効果があり、「点眼薬」「うがい薬」「胃潰瘍の薬」などとして用いられてきました。
また、半導体に似た性質をもつことから、電子工学材料としても注目されています。
現在、多くの電子機器に使われている半導体はシリコン材料が主流ですが、コストや環境への影響から有機半導体が注目されています。
アズレンは電子が動きやすい性質を持ち、新しい有機半導体の材料としての可能性が探られているのです。
さらに驚くべきは、アズレン誘導体には抗がん活性を示す化合物があることが判明し、山口博士ら研究チームは、がんの予防や治療に効果が期待される化合物の研究を進めています。
具体的には、がん細胞にこれらの化合物を接触させ、どれだけ効果的にがん細胞の活動を抑えることができるかを調査しており、この重要な研究成果は、2021年に『FEBS Open Bio』という専門の科学ジャーナルに掲載されています。
新しい化合物を作り出すことに成功
研究チームは、鈴木-宮浦クロスカップリング反応(※2)という技術を使って、アズレンとピリジンという化合物との置換反応を行いました。
その結果、「アズレニルピリジン」という新しいアズレンの化合物を作り出すことに成功したのです。
興味深いことにこの新しい化合物は、中性溶液と酸性溶液では色が変わるなどの特性があります。
研究チームは今後、この新しい化合物が電子機器の材料としての適性を調べていく予定です。
(※2:鈴木-宮浦クロスカップリング反応は、異なる有機化合物の炭素同士を結合させる反応で、その中で触媒として有機ホウ素化合物を使用するものを鈴木・宮浦クロスカップリング反応と称します。この反応を開発した北海道大学の鈴木章名誉教授は、2010年にその業績でノーベル化学賞を受賞しています)
アズレンは多くの可能性を秘めている
アズレンは特殊な形をしており、7つと5つの炭素の環がくっついた形をしています。
これを7-5-7-5…と連続してつなげるのは大変難しく、今のところ、7-5-7までの形にしか作れていませんが、もし7-5-7-5の形に成功すれば、それは世界初の偉業となります。
研究チームは、ギネス記録を目指してこの大変な課題に日々チャレンジしています。
アズレンといえば、スマホゲーム「アズールレーン」を思い浮かべる一般には多いかもしれませんが、科学と医学の世界のアズレンは深い歴史があり、多くの可能性を秘めている興味深い物質です。
この物質の今後の研究が、医学や科学の分野において、どのような新しい発見や応用をもたらすのか、注視していきましょう。