ウイルスが複雑な共生関係を支える1ピースになっている
通常のウイルスは宿主となる細胞に感染して増殖すると、最後には細胞を破壊して拡散します。
つまりウイルスにとっては宿主の破壊こそが自己複製の肝と言えるでしょう。
では、複雑な共生関係の中でウイルスは何をしていたのでしょうか?
答えを得るために研究者たちはウイルスと共生細菌の関係について調べました。
すると驚くべきことに、このウイルスに感染した共生細菌には感染していない共生細菌に比べてクリプトモナスの内部に多く存在できることが発見されました。
この結果は、ウイルスには共生細菌にとってクリプトモナスの内部で上手くやっていくために役に立つ遺伝子が含まれている可能性を示します。
(※クリプトモナスのサンプルが大学で保管されるようになってからおよそ50年、実に4400世代以上にわたり、共生関係が維持されていることが示されています)
クリプトモナスの内部でバランスをとるためにウイルスは共生細菌を助け、短期的な拡散ではなく長期的な共存の道を歩んでいたのです。
研究者たちはクリプトモナスのように複数種類のゲノムがかかわる複雑なシステムは、他の生物にも存在している可能性が高いと述べています。
複数のゲノムを共存させる仕組みを解き明かすことができれば、さまざまな生物の遺伝子や体を部品のように組み合わせて、人間の役に立つ生命を創造する「合成生物学」にとっても有益となるでしょう。