ホモ・ナレディの脳サイズは現生人類の3分の1しかない
絶滅した人類種の1つホモ・ナレディの化石が最初に見つかったのは2013年のことです。
これは南アフリカの都市ヨハネスブルグの近郊にある「ライジングスター洞窟」の内部で発見されました。
この洞窟は、”人類のゆりかご”と通称され、ユネスコ世界遺産に登録されている「南アフリカの人類化石遺跡群」の一部です。
それ以来、ライジングスター洞窟ではホモ・ナレディの化石断片が延べ1500個以上も回収されています。
またホモ・ナレディの化石から全身骨格を復元してみると、ホモ・サピエンスよりずっと小柄であることが分かりました。
大人でも身長は約1.5メートル、体重45キロと推定され、脳のサイズは私たちの3分の1程度、研究者らは「ミカンほどのサイズ」と表現しています。
ホモ・ナレディは類人猿と現生人類の中間的な存在ですが、道具を扱うための器用な指先や二足で歩くための足はすでに持ち合わせていました。
その一方で、脳の小ささから「ホモ・サピエンスのように死者を弔うといった文化的な行動は取らなかっただろう」というのが一般的な見解でした。
ホモ・ナレディによる「世界最古の埋葬地」を発見!
しかし今回、同じライジングスター洞窟で2018年から続いていた発掘調査により、ホモ・ナレディの遺骨を埋めた埋葬地が発見されたのです。
埋葬地は地下約30メートルの場所にあり、床に楕円形の穴を2つ掘っていて、そこに識別できる限りでも5人の遺骨が埋められていました。
これは明らかにホモ・ナレディが意図して死者を弔った証拠と考えられます。
また遺骨の1つには、手首の骨に密着する形で石器が1つ見つかっており、埋葬品も一緒に供えていたことが示唆されました。
埋葬地の年代は約33万5000年〜24万1000年前と推定されており、ヒト属による埋葬証拠としては間違いなく世界最古のものです。
研究者らは「少なく見積もってもホモ・サピエンスによる最古の埋葬より10万年以上は古い」と述べています。
さらに驚きはそれだけに留まりませんでした。
なんと同じ地下洞窟内で、石の壁に幾何学模様を彫り込んだ”アートの痕跡”まで見つかったのです。