ホモ・ナレディには「芸術の文化」も持っていた?
研究チームは洞窟の柱に、わざと表面を削って平らにした痕跡や、十字架や正方形、三角形、また井の字のような幾何学模様を無数に掘り込んでいる跡を発見しました。
ホモ・ナレディがこれらの彫刻にどんな意味合いを持たせていたかは不明です。
しかし、のちの時代にホモ・サピエンスが壁画として表現した「芸術の心得」が、すでにホモ・ナレディの中に芽生えていたことを示すものかもしれません。
以上の発見は、人類の進化や文化の発達について再考を促します。というのも死者の埋葬や芸術はこれまで、脳が大きくなるにつれて複雑な感情や高度な認知能力を持ったときに初めて可能となるものと考えられていたからです。
しかし、ホモ・ナレディの脳は先にも言ったように、私たちの3分の1程度しかありませんでした。
研究主任で古人類学者のリー・バーガー(Lee Berger)氏は「それにも関わらず、ホモ・ナレディが死者を埋葬し、洞窟の壁にシンボルを刻み込む能力を持っていたことは驚くべき発見である」と述べています。
今回見つかった埋葬地や彫刻については更なる分析を必要としていますが、ホモ・ナレディは亡き者を悼み、美を追求するこころを持っていたのかもしれません。