モザイク画の真下にもう一枚のモザイク画を発見!
古代ローマの霊廟が見つかったのは、ロンドン中心部のサザーク地区にある開発途中の建設現場です。
この霊廟は正確には「マウソレウム(Mausoleum)」と呼ばれる建造物で、故人を埋葬する棺を納めたり、祖霊をお祀りする機能がありました。
今回見つかったのは地中に埋まった基礎部分であり、壁や屋根は無くなっていますが、入り口に通じる階段や内部の床などが残されています。
最大の注目ポイントは、床の中央部に赤や白のタイルを敷き詰めたモザイク画がほとんど無傷で見つかったことでした。
四角い白枠に二重の黒円で囲まれた赤い花が描かれています。
ここまで保存状態の良いローマ時代のモザイク画はイギリス国内でも極めて珍しいとのことです。
さらに驚きは止まりません。
なんとこのモザイク画を外した真下に、もう一つ別のモザイク画が発見されたのです。
上と下の写真を見比べてみると、モザイク画の絵柄も少し違うことが分かると思います。
これについて研究者は「霊廟が使われていた当時に改修が行われて、床を一段上に高くしたと考えられる」と述べています。
また床の周りの壁に沿って、ピンク色のモルタルを固めて作られた台座が確認できました。
これはローマ時代の建築材料として広く使われていた「オプス・シグニナム(opus signinum)」と呼ばれるもので、耐久性と防水性に優れています。
おそらく、この上に故人の遺体を納めた棺を置いたのでしょう。
一方で、霊廟内では人の遺骨や棺そのものは見つかっていません。
その代わり、床の上にはローマ時代の硬貨が100枚以上散らばっていたり、また霊廟の周囲では、故人の副葬品と思しきビーズや陶器、骨製の櫛(くし)、銅のブレスレットなどが出土しています。
MOLAの考古学者で発掘を率いたアントニエッタ・レルツ(Antonietta Lerz)氏は「今回の発見は、ローマ時代のロンドンの生活状況やライフスタイルを垣間見る上で魅力的な窓となる」と話しました。
ローマ時代のロンドンでは、紀元47年頃にクラウディウス帝(BC10〜AD54年)率いるローマ帝国が侵略し、「ロンディニウム(Londinium)」という都市を築きました。
しかし5世紀初めにローマ帝国が衰退し、ロンディニウムから軍隊を引き上げたことで、ローマによる統治は終わりを迎えます。
後には、元々イギリスにいたブリトン人と移住していたローマ人たちが残されましたが、度重なる蛮族の襲撃を受けて、450〜500年の間に全ての住民が立ち去ってロンディニウムは放棄されました。
もちろん新たに見つかった霊廟も放置されたはずですが、レルツ氏は「おそらく、中世の間に他の場所で再利用するために霊廟の高い壁だけが解体されて持ち運ばれたのでしょう」と推測しています。
チームは今後、永久保存のために霊廟の移動と修復を行った後、一般公開を予定しているとのことです。
ちなみにチームは、霊廟の基礎部分からありし日の全体像を復元した3D映像も公開しました。
これを見ると、霊廟の中がどのようにレイアウトされていたのかが想像できます。