脳の回路の機能不全が関与している可能性
強迫性障害の原因は完全には解明されていませんが、脳の特定の回路が関与していると考えられています。その一つが「皮質-線条体-視床-皮質回路(CSTC circuit)」です。
この回路は、脳の異なる部分が互いに情報をやり取りするループ状の経路で、行動、感情、思考などを調節する役割を担っています。
この回路の一部が適切に働かないと、強迫観念や強迫行動が引き起こされると考えられています。
「回路の一部が適切に働かない」とは、具体的には、前頭葉(特に眼窩前頭皮質(OFC)と呼ばれる部分)からの信号が線条体(特に尾状核と呼ばれる部分)に送られる際、この信号の制御がうまく機能しないことです。
通常、尾状核は視床への信号を抑制する役割を持っていますが、制御がうまくいかないと、視床への信号が抑制されず、視床が過剰に活動するようになります。
これにより、視床と眼窩前頭皮質の間で過剰な活動が生じ、強迫観念や強迫行動といった症状が引き起こされると考えられています。
脳の回路は、神経伝達物質という特定の化学物質によって調節されます。
「グルタミン酸」は神経細胞を刺激し、情報伝達を促進する役割があります。一方で、「GABA」は神経細胞の活動を抑制し、情報伝達を減少させる役割があります。
これらの化学物質のバランスが崩れると、前頭皮質と線条体の間の情報の流れが乱れ、強迫的な行動が引き起こされるのではないかと見られています。