南極では「子供を肌身離さず育てる」が主流?
これまでの研究で、育児行動を取るヒトデ種は数多く知られており、特にその分布は南極の海域に多いことが分かっています。
その理由について専門家らは「南極を流れる海流の強度に関係している可能性が高い」と指摘します。
南極の海では潮の流れが激しいため、小さくて弱いヒトデの幼生が海底に定着するのは困難です。
加えて、P. フェラックスのように南極ヒトデの多くは深海に生息しており、そこでは太陽の光が届きません。
すると、餌となる植物プランクトンが光合成できないので繁殖せず、幼生たちは食べるものがほとんどないのです。
そこで幼生が生き残るためには、親が栄養を与えながら育児するのが最も合理的だと考えられます。
マー氏は「既知の南極ヒトデの約40%はなんらかの育児行動を取っている」と推定しています。
ただし育児の仕方は千差万別であり、親が口の中に子供を咥えておく種もいれば、腕の間に抱え込む種もいるという。
一方で、P. フェラックスのように完全に体腔内に幼生を納めて育てる例は他に知られていません。
生きた個体が見つかっていないので、その詳しい仕組みはよく分かりませんが、親は子供たちが一人で生きていくのに十分な大きさになると口から排出すると予想できます。
またマー氏は保管棚からP. フェラックス以外にも複数の新種を特定しており、ヒトデに関する新発見をするのにわざわざ南極まで足を運ぶ必要がないことに言及しました。
氏は今回の研究が、保管庫の生物標本の重要性を改めて認識させる機会となることに期待しています。
P. フェラックスのより鮮明な画像は「Smithsonian MAGAZINE」からご覧いただけます。