心臓が止まっても生きていく”凍結カエル”
主役となるのは、北米に生息するカエル「Lithobates sylvaticus」です。
このカエルは両生類の中でも特に北方に分布し、北極圏近くでも生きています。
冬になるとウッドフロッグは水中に潜ることなく、森の落ち葉の下に身を隠します。
気温が氷点下になると、体内の水分の約65〜70%が凍結し、心臓は完全に停止。
呼吸は行われず、脳や神経の電気信号も消失します。
医学的に見れば、これは臨床的に死亡した状態とほぼ同じです。
それでもこのカエルは、この状態で数カ月を過ごし、春になると完全に復活します。
では、なぜ普通の生き物は凍ると死に、Lithobates sylvaticusは復活できるのでしょうか。
生物が凍結に弱い最大の理由は、氷そのものが持つ物理的な破壊力にあります。
体が凍ると、通常は細胞の内部にも氷の結晶が形成されます。
この氷は鋭い刃物のように細胞膜や内部構造を傷つけます。
その結果、哺乳類を含む多くの生き物は、体の大部分が凍結すると不可逆的な損傷を受けて死んでしまいます。
一方で、Lithobates sylvaticusは、氷のできる場所を制御することで、体が凍っても生き残ることができます。
このカエルでは、氷は主に細胞外で形成され、細胞内部にはほとんど入り込みません。
その結果、細胞膜や内部構造は物理的な破壊を免れます。
つまり、Lithobates sylvaticusは「凍らないのではなく、壊れないように凍る戦略」を取っているのです。
さらにLithobates sylvaticusは凍結が始まると、肝臓から大量のグルコースを血中に放出します。
同時に腎臓は尿の排出を止め、尿素が体内に蓄積されます。
このグルコースと尿素の組み合わせが、細胞を凍結から守る強力な天然の保護物質として働きます。
自然環境では冬の間に何度も凍結と融解が起こりますが、それでもLithobates sylvaticusが生き延びられるのは、この化学的な防御があるからです。
ちなみに、凍結耐性を持つカエルは他にも存在します。





















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