呼吸パターンは記憶形成を変えるのか
今回の研究では、遺伝子改変した特殊なマウスと光遺伝学という技術を用い、マウスの延髄内の呼吸中枢に光を照射し、呼吸パターンの操作を行いました。
光遺伝学(オプトジェネティクス)とは、光を用いて生体の細胞や神経系の活動を制御する技術。この技術を用いると、光に反応するよう遺伝子改変した生物に対し、光の照射をし神経細胞の活動を操作できます。
実験では、正常なマウスと遺伝子改変した特殊なマウスを対象に記憶課題を行なっています。
記憶課題では、①箱の色と電気ショックの関連性を記憶させるフェーズと②マウスの記憶の正確さを測定するフェーズに分けています。
記憶フェーズ
まず音と同時に電気ショックが流れる白い箱と何も起きない黒い箱の2色の箱にマウスを入れ、箱の色と電気ショックの関連性を記憶させます。
このとき、実験では音と電気ショックが流れる瞬間に、さきほどの光遺伝学を用いてマウスの呼吸パターンを、無呼吸状態、不規則状態、低頻度呼吸などに操作しています。
記憶力測定フェーズ
その後、再びマウスを箱に入れ、白い箱と電気ショックの関連性を記憶しているかどうかを調べました。
もしその関連性を正確に記憶できている場合、白い箱に入った時に電気ショックを予測し、音が鳴った瞬間に身体を硬直させる反応をみせるでしょう。
一方で、正確に記憶できていない場合には、電気ショックが流れないはずの黒い箱の中で身体を硬直させる反応や白い箱の中で電気ショックを予期せず動き回る反応を示すはずです。
さて、呼吸パターンや呼吸頻度によって記憶形成に違いは見られたのでしょうか。