コーヒーかすが深刻な環境問題になりつつある
私たちが耳にすることはありませんが、実は今、使用済みコーヒーかす(Spent coffee grounds:SCG)は深刻な環境問題になりつつあります。
研究主任のラジーヴ・ロイチャンド(Rajeev Roychand)氏によると、年間1000万トンを超える使用済みコーヒーかすが世界で発生しており、しかも大部分は埋立地に送られているという。
「有機廃棄物のコーヒーかすはそのまま廃棄されると、二酸化炭素のおよそ21倍の温室効果を持つメタンを大量に排出するため、温暖化に拍車をかける一因になっている」とロイチャンド氏は説明します。
そこで研究チームは大量のコーヒーかすを再利用する方法として、建設用コンクリートの材料に使う案を思いつきました。
一般的なコンクリートは水・セメント・砂・石を混ぜて作られますが、以前から「使用済みコーヒーかすは粒子の直径から砂の代わりとして使える」ことが提案されているのです。
コンクリートは現代社会の建築に欠かせない資材となっていますが、そのために大量の天然砂が河床や堤防から採取され続けています。
推定で年間500億トンの砂が世界中の建設プロジェクトに使用されているという。
資源には限りがあるため、このままでは持続可能な砂の供給は困難であり、また砂を大量に採取する行為は環境にも何らかの二次被害を出す恐れもあります。
それゆえ、使用済みコーヒーかすを砂の代替材料にすることは多くのメリットがあるのです。
コーヒーかすをバイオ炭に変える
しかしコーヒーかすは有機物であるので、そのまま混ぜ込んでも他の材料と結合せず、砂の代わりにはなりません。
まずは抽出後のコーヒーかすを乾燥させて加熱し、「バイオ炭(Biochar)」に変えることが必要です。
バイオ炭とは、生物由来の有機物(バイオマス)を焼いて炭化させたものを指します。
他の原料としては木や竹、もみ殻、家畜の排せつ物などがあり、それらをバイオ炭にすることでメタンや二酸化炭素を封じ込め、温室効果ガスの排出量を削減するメリットもあるのです。
チームは今回、使用済みコーヒーかすをバイオ炭にするところから実験を始め、どれくらいコンクリートの強度アップに貢献するかを検証しました。