原因は食糧難だった⁈
チームが調査地に選んだのは、P. オルナタが分布するウルグアイの南部と北部です。
ウルグアイ南部は1年を通して比較的安定した気候が続き、クモにとってのストレス因子も少なく、餌も豊富に得られることが分かっています。
一方でウルグアイ北部は予測不能な気候変化に富んでおり、自由に餌が入手できずに食糧難に陥ることが多々あります。
チームはこの2カ所でP. オルナタのプレゼントを採取し、包みを開封して、中に何が入っているかをチェックしました。
その結果、ウルグアイ南部では立派なごちそうを贈るオスが支配的であり、メスにとって価値のない贈り物をしていたのは38%に留まっています。
ところがウルグアイ北部では立派な餌を贈るオスはほとんどおらず、中身が空っぽだったり食べカスを包んでいる割合がなんと96%に達していたのです。
これは明らかに、オスたちが好きでプレゼントの手を抜いているわけではないことを示唆しています。
アルボ氏はその理由として、ウルグアイ北部では周囲に十分な餌の量がないため、オスたちは自らの食料をまかなうだけで精一杯なのではないかと推測しました。
実際、この地域では(おそらく南部より普段から得られる餌が少ないために)クモのサイズも小さくなっていたとのことです。
これに対して現地のメスたちがどう思っているのかは分かりません。
ただ、基本的に餌が豊富な地域では中身のない包みを渡されたメスは拒絶を示すため、食糧難の地域ではメスもある程度諦めている部分があるようです。
この種はプレゼントの習慣によってメスが交尾後にオスを食べるという行動は取らないため、貧困地域のオスたちは、交尾の時間を稼ぐために中身のないプレゼントをする状況になっているようです。
人間社会でも似たようなことは起こりそうですが、クモの世界でも貧困が進むと詐欺のような手口が横行してしまうのでしょう。悪いのは貧しさのようです。