35万回以上のコイントスが「弾く前と同じ面が出やすい」ことを証明
今回の実験では46カ国で鋳造されたコインが使用され、48人がかりで、合計35万757回ものコイントスが行われました。
「参加者たちがひたすらコイントスし続ける」様子は、YouTubeで公開されているため、時間がある人はチェックしてみると良いでしょう。
動画の中では皆が黙々とコインを弾いており、後ろの焚火の映像とも相まって、まるで何かの儀式のようです。
そして狂気のコイントス実験の結果、確率はやはり五分五分ではないことが明らかになりました。
コインを弾く前と同じ面になる確率は50.8%だったのです。
この結果は、数学者ディアコニス氏の2007年の研究結果と一致しています。
コイントスにはほんの僅かな偏りがあることを証明したのです。
では、この事実を知っていることで、私たちにはどれくらいのメリットがあるのでしょうか。
バルトシュ氏は、次のように述べています。
「コイントスの結果に1ドルを賭けて(つまり参加費1ドルで負ければ没収、勝てば2ドル獲得)、その賭けを1000回繰り返した場合、平均して19ドル稼げます」
1回だけの勝負だと負ける可能性も高いですが、何百回以上もの複数回の勝負であればこの僅かな差がじわじわと響いてきます。
賭け金が大きければそれだけ利益も大きくなるため(例えば1000ドル賭けた勝負なら1万9000ドル:約280万円の利益)、いくらか夢があるように思えるかもしれません。
この事実を知ったあなたは、今後コイントスする際には、コインが弾かれる前にどちらが上を向いているかをチェックし、それと同じ側を選べば有利になるはずです。
ただ実物のコインを使ったコイントス・ギャンブルの勝負に1000回も連続で乗ってくれる人はいないでしょうが。
また今回の実験は、様々な人と硬貨で実施しているため、(現実の状況には近いかもしれませんが)条件にばらつきがあることを考慮すべきです。
実際研究チームは、コイントスの仕方と結果は人によってばらつきがあり、同じ面が出やすい人もいれば、全くその傾向が無い人もいたことを指摘しています。
とはいえ、数学的に証明されていた理論を、実際実験して再現できたというのは重要な事実でしょう。
多くの人たちは、このような手間のかかる実験をわざわざやることの意義に疑問を持つかもしれません。
しかし理論的な予測は理想的な条件で計算された結果であって、現実どうように振る舞うのかは実際やってみなければわかりません。
物理学者たちは常に、理論の予測が複雑な要素の絡む現実で試しても通用するかどうかに興味を持っています。
そこが理論物理学者と実験物理学者の違いでもあり、物理学は理論と実験の2つの結果が一致して初めて事実と認められます。
コイントスは現実では様々な人達が様々な種類のコインを使って行うものであり、投げ方のクセやコインの形状によってバラつきが生まれます。
その上で現実でどのような結果が見られるのかを、非常に多くのデータを取って検証することは、一見バカバカしいように見えても重要な実験と言えるでしょう。
次回私たちが参加するコイントスに偏りがあるかどうかは、誰にも分かりません。しかしどうしても負けたくない勝負では、今回の報告を気に留めておく価値はあるかもしれません。
今後は、ぜひ弾かれる前のコインに注目してみてください。
記事に加筆修正を行いました。