常温常圧超伝導体「LK-99」は主に鉛と銅でできている
まずそもそも超伝導になると物質内で何が起こるのでしょうか?
文字をみると、電子の流れを現わす「伝導」という言葉の前に「超」がついており「電子の流れが超(凄い)」と読み取れます。
私たちの身の回りにある電線や家電のコードも電気をよく通す銅が用いられていますが、当然抵抗があるため熱を発してその分のエネルギーが失われます。PCのCPUやグラボが非常に発熱するのも、電気抵抗が原因です。
金属を構成する原子は常に振動しており、流れる電子と衝突を繰り返し、その結果熱というロスを発生させるのです。
一方、超伝導状態では電子の流れに抵抗がなくなります。
これまでの研究では、超伝導を起こすには「冷やす」か「圧力をかける」かどちらかが必要だと考えられていました。
冷やすと電子の通行を妨害する原子の振動が少なくなります。
しかし、これは非常に低温にする必要があるため、日常の環境で利用することは困難です。また低温にするために大きなエネルギーを消費するのでは、超電導を利用するメリットはかなり減ってしまいます。
また非常に低温にせずとも、圧力をかけることで物質内部の原子配列が変化して電子の流れかたも変わって超伝導に都合のいいパターンになってくれる可能性がありました。
実際、水素に極めて高い圧力をかけた場合、常温に近い環境でも超伝導を達成できると考えられています。
ただ超高圧環境も日常の環境とはかけ離れたものであるため、利用しづらく、また高圧環境を作るために莫大なエネルギーが必要になり、超電導のメリットは活かせません。
そのため超電導を技術的に社会に取り入れるためには、常温常圧で実現する必要があります。
そこで研究者たちは超伝導を起こしやすい特殊な材料開発の方面から超電導の研究を進めてきました。
複数の異なる原子を混ぜた場合、原子同士の配列に割り込みや連結など予想外の変化が起こって物理的性質が変化し、超高圧をかけたときにしか見られなかった状態になる可能性があったからです。
この力押しではなく配列の妙技を利用する方法は、生物の酵素に似ているとも言えるでしょう。
そこで今回、量子エネルギー研究センターの研究者たちは、まず「鉛・リン・酸素・硫黄」からなる鉛アパタイトと呼ばれる鉱物を作りました。
そしてこの鉛アパタイトに銅を混合し、焼き上げて「LK-99」を作りました。
そしてこの研究チームの報告では、「LK-99」の電導性を調べたところ、大気圧環境下にもかかわらず127℃という極めて高い温度で電気抵抗がなくなり超伝導になった、というのです。
また「LK-99」を磁石の上に置いたところ、超伝導の特徴の1つである「マイスナー効果」を発揮して浮遊したと報告しました。
超伝導を起こした物質は外部からの磁場を一切拒絶する性質があり、噴水の上のゴムボールが水をはじくようにして、磁場を下からあてられると浮遊します。
この結果が事実ならば、常温常圧超伝導物質が、主に鉛と銅を混ぜただけの比較的簡単な方法で作成できたことになり、まさに革命的と言えます。
問題は、それが真実であるかどうかです。