「LK-99」は少なくとも普通の物質じゃない
これまでに行われた複数のシミュレーションと再現実験により、LK-99が持つ奇妙な物性が明らかになってきました。
シミュレーションで得られた「超伝導性の可能性アリ」との結果は複数の研究機関で一致したものであり、少なくとも理論的には有望さをうかがわせています。
しかしシミュレーション結果は超伝導が起こる物質と似た電子パターンが発見されたというだけで、超伝導であることとと即イコールで結び付けられるわけではありません。
またLK-99の浮遊を確認したとする2件の検証結果と超伝導性を確認したとする1件の検証結果も、最終的な結論を出すには不十分です。
というのも、磁気で浮遊する特性は超伝導の証のように思われがちですが、同じ現象は磁気を拒絶する「超伝導ではない反磁性」の物質でも起こり得ます。
またマイナス163℃という比較的高い温度で確認された超伝導性も、元となる研究やどの再現実験とも異なる結果であり、追加の検証が必要です。
そしてLK-99に使われている銅は銀に次ぐ電導性の高さを持っているため、小さいサンプルでは、超伝導との見分けがつきにくくなっています。
つまりLK-99は磁気で浮く反磁性と、銅に由来する電気抵抗の低さという、2つの性質を兼ね備えているだけであり、それら2つの特性が組み合わさって超伝導が起きているように見えるだけの可能性があるのです。
ですが、たとえそうだとしてもLK-99が興味深い物質であるのは確かです。
LK-99の主な材料である鉛や銅をはじめとした材料は、単体では磁気で浮き上がりませんし、多少冷やしたくらいでは超伝導にはなりません。
またシミュレーションによって現れた超伝導に特徴的な電子パターンも、それぞれ単体の材料からは確認できないものです。
そのため多くの研究者たちはLK-99が常温常圧超電導の性質を持つかは別に、少なくとも普通の物質ではないと結論しています。