新たな薬は乗り物酔いの原因を直接叩ける
今回の研究では、判明したメカニズムを元に、乗り物酔いを防ぐ手段も検討されています。
戦術の通り、今回の研究では三半規管から脳に続く神経線維のなかで、特定の受容体「CCK-A」を持つニューロンが乗り物酔い防止に重用であることが示されています。
受容体とは細胞表面にある化学物質の検知器であり、他の細胞から発せられた化学物質に結合して細胞内部に信号を伝達する役割を持っています。
そこで研究者たちはこの受容体に強く結合する外部物質を投与して受容体を封印してみました。
すると予想通り、マウスの乗り物酔い症状の一部が大きく緩和していることが判明しました。
市販の乗り物酔い止めの薬にはしばしば「乗り物に乗る〇〇時間前に飲んでください」あるいは「飲んだら運転するのはやめましょう」といった表記がみられます。
これまでの乗り物酔い用の薬は、主に脳活動の一部を鈍くすることで乗り物酔いの軽減を行ってきました。
有効な方法ではありますが、原因を直接的に叩けないため、副作用や使用制限が伴います。
しかし今回の研究によって乗り物酔いのメカニズムの解明が進み、乗り物酔いの経路を直接的にブロックする方法が示されました。
もし同じ仕組みが人間にも上手く機能する場合、全く新しい乗り物酔いの薬が開発できるでしょう。