「ハイエナのうんち」の化石から、ケブカサイのゲノムを組み立てることに成功
これまでの研究により、氷河期のケブカサイは、シベリアとヨーロッパに生息していたと考えられています。
しかし、入手可能なゲノム(DNAの文字列に表された遺伝情報のすべて)データは、もっぱらシベリアに生息していたケブカサイから得たものでした。
今回、シーバー氏ら研究チームは、ヨーロッパのケブカサイの情報を入手したいと考えました。
用いられた方法は、同じ時期に生息していた動物の糞を調べるというもの。
ホラアナハイエナ(学名:Crocuta crocuta spelaea)は、ケブカサイを含む様々な大型動物を攻撃し、捕食することで知られています。
そこで研究チームは、ドイツの2つの洞窟で発見されたホラアナハイエナの「化石化した糞」を入手しました。
そしてその糞サンプルからケブカサイのDNAを分離し、ミトコンドリアゲノムを組み立てることに初めて成功しました。
このミトコンドリアゲノムは、細胞小器官「ミトコンドリア」内に見られる遺伝情報であり、祖先を追跡するのに役立つと考えられています。
チームは、これを分析することで、「ヨーロッパのケブカサイとシベリアのケブカサイは約4万5000年前に共通の祖先から分かれた」と推測するに至りました。
最後に彼らは、「化石化した糞の研究の価値はこれまで見落とされてきており、古代生物を知るために有用である」と主張しています。
もしかしたら今後も、氷河期のケブカサイなどを含む様々な絶滅動物の情報が、それを捕食する他の動物の糞から得られていくのかもしれません。