質の高い論文の絶対数が急減している
研究の質が下がったのも、周りの国が伸びたからなのでしょうか?
ここで注目すべきは、世界全体の論文数もまた、20年前と比べて大きく増えているという点です。
日本でも20年前に比べて発表される論文数は約6万5000本から7万本と5000本ほど増えています。
ただ日本の増加速度は他の国々(上位25カ国)と比べると、最も遅い部類となっています。
米国は同じ時期に20万3000本から30万2000本と10万本近く増加し、中国に至っては46万本の増加、イタリア、フランス、ドイツ、イラン、韓国など他の国でも数万本もの増加がみられます。
総論文数が増えたということは、世界全体で研究が活発になり、新規分野の開拓が進んでいることを示しています。
そして増加した論文の中に優れたものが含まれていれば、全体数の増加に連動して質の高い論文の絶対数も増えていきます。
ただ日本では同じことは起こりませんでした。
日本では20年前はトップ10%に入る論文の数は4443本でしたが現在では3767本と劇的な低下を見せています。
総論文数が増えたものの、評価の高い論文数はむしろ減っているのです。
これはシェア率ではなく、絶対数の減少です。
つまり日本の研究の質が低下したのは単に周辺国が伸びたのに加えて、評価の高い論文を出す能力が日本から失われていることも原因となっていたのです。
実際、主要国のうち、トップ10%に入る論文数(絶対数)が減ってしまったのは日本だけです。
しかし、なぜ日本では質の高い論文を出せなくなってしまったのでしょうか?
まず考えられるのは、研究者数の減少です。
報告書では各国の研究者数が調べられており、日本の研究者数が2000年代後半から僅かに増化していることを示しています。
大学部門や企業部門の研究者数も20年間の間に増加していました。
つまり日本は20年前と比べて研究者数が少し増えて、論文総数も増えているのに、質の高い論文数だけが減っていると言えるでしょう。
では研究者数が減ってないのに、なぜ研究の質が低下してしまったのでしょうか?