街の景色に溶け込む新時代の発電機
太陽光発電や風力発電は、持続可能エネルギーとして注目を集めています。
しかしそれらは人工物のイメージが強く、無思慮に設置すると景観を損ないます。
例えば、街中に巨大な風車型の風力タービンを設置したり、広大な敷地をソーラーパネルで埋め尽くしたりするなら、多くのエネルギーを生成する代わりに、無機質なイメージを定着させるでしょう。
私たちが好む「自然豊かで気持ちの良い雰囲気」とは遠く離れているのです。
それでも、私たちの目指す新しい世界、つまり「持続可能な社会」には、これら人工物が生成するエネルギーが必要不可欠です。
こうした課題にアプローチするため、アメリカのエネルギー会社「New World Wind」は、その名が示すとおり、持続可能エネルギーが社会に溶け込んだ新しい世界のイメージを提供してくれました。
彼らが開発した新しい発電機は、樹木に似せたデザインを採用しています。
街路に設置された無機質な発電機ではなく、そこに植えられた街路樹のような印象を与えることが目指されています。
ただ木に見えると言っても、その葉を模したパーツは単なる飾りなわけではありません。
「葉」もしく「つぼみ」に見えるその部品は、風で回転する風力タービンです。
この風力タービンは、その特殊な形状から360°どこから風が吹いても回転する設計になっています。
このシステムはベルトやギアを使用していないため騒音は発生しないといいます。
さらに風速2.5m/sの弱い風(髪の毛が若干乱れるくらい)でも電気を生成することができ、年間約300日は稼働するようです。
またこれらの「風力発電の葉」以外に、「太陽光発電の葉」を追加することもできます。
こちらの平らな葉にはソーラーパネルがついており、太陽が出ている限り、電気を生成してくれます。
そしてこれらで構成される樹木のようなハイブリッド発電機は、設置場所に応じていくつかの種類が用意されています。
例えば、一番小さな「WindBush」は高さ5.8mであり、個人宅の庭や狭いスペースに設置できます。
またいくらか大きい「WindPalm」は高さ8.8mであり、30枚の「葉」がついているバージョンの最大出力は、9720Wとなります。
New World Wind社によると、これらを1本設置するごとに、年間で、「家庭での電力消費(暖房を除く)の83%」、または「街灯15本分の電力」、もしくは「電気自動車が1万6364km走るための電力」を賄えるようです。
ちなみに、「葉」や「幹・枝」はいくつかの色からオーダーできるため、周囲に合わせて、様々なパターンを選択できます。
見た目はまだまだ、自然な木と呼ぶには程遠いものですが、この写真のように景観と馴染ませる試みは、ただ無骨な発電機を設置するより良いものかもしれません。
加えて新しい発電機は、電気自動車を充電するための充電ポートや電子機器の充電に欠かせないUSBポートもついています。
さらにLEDランプを取り付けて街灯として機能させることも可能なのだとか。
まだチープな印象も残るデザインですが、自然エネルギーを利用した発電機は、発電量の少なさや発電の不安定性を補うために、街中のあちこちに設置する必要がでてきます。
そんな持続可能エネルギーが当たり前になった「新しい世界」では、景観に溶け込む樹木など自然の造物に似せたデザインで発電機を設計していくという考え方が重要になるかもしれません。
New World Wind社によると、この新しい発電機は、現時点で、オランダやカナダ、オーストラリア、日本など、世界の130カ国に導入されているようです。
もしかしたら将来、街路樹のようなハイブリッド発電機があちこちに設置され、クリーンな電力が安定して供給される社会が到来するのかもしれません。