白亜紀にいた「カメの赤ちゃん」の化石だった!
カデナ氏は送られてきた写真を見て、すぐに「これは明らかにカメの甲羅だと分かった」といいます。
ただフエルタス神父やその他の研究者が、化石を見てそうと気づかなかったのには訳がありました。
カメの甲羅に見られる典型的な模様がなかったからです。さらにこの化石はお椀型に少し凹んでいました。
しかしカデナ氏いわく、これはカメの甲羅の表側ではなく、裏側が化石の表面になるように保存されたことに原因があったといいます。
これに沿って化石の復元図を描いたのがこちらです。
カメの甲羅は肋骨が変形してできたものですが、ちゃんと正中線の背骨を境に肋骨が左右に並んでいるのがわかります。
またカデナ氏は「一般的にカメの幼体は甲羅がとても薄くて簡単に壊れてしまい、化石として残りにくいため、これは本当に貴重な発見です」と話しました。
それからチームは化石から年齢分析をしたところ、このカメは孵化後の成長段階にあり、1歳頃に死んでいたことが特定されています。
一方で、このカメの正確な種類までは分かっていません。
ただチームは、同じ白亜紀に生息していた「プロトステガ科(Protostegidae)」という古代ウミガメの近縁種ではないかと考えています。
実際、この科の最古の種である「デスマトケリス・パディライ(Desmatochelys padillai)」が2015年にコロンビアで発見されていました。
ポケモンにちなんで「ナエトル」と愛称を付ける
ヘレーラ氏らはフエルタス神父の誤りを責めるつもりは一切ありません。
今回のカメの化石とスフェノフィラム属の化石は確かに似ており、古生物学の専門家でもなければ、カメの赤ちゃんの甲羅の裏側だとは到底判別できないからです。
そこでチームはこの化石に、カメと植物のハーフであるポケモンにちなんで「ナエトル(英名でTurtwig)」という愛称を付けました。
ナエトルとは、ポケットモンスター「ダイヤモンド・パール」の御三家の1匹であり、頭の上にちょこんと生えた若葉が愛らしい生き物です。
パルマ=カストロ氏は「ポケモンの世界では、動物・機械・植物など、2つ以上の要素を組み合わせる特徴があり、今回は植物に分類されていたカメということで、すぐにナエトル(Turtwig)の名前が思い浮かびました」といいます。
チームはまた、この発見が示すように、博物館の化石コレクションを再訪して、古い化石を新たに調べ直すことの重要性を再認識したと話しました。
世界中の博物館には他にも、まったく違う動物や植物として記録されている化石がたくさん眠っているかもしれません。