たった4つの単語が感情の中心的なハブとして機能する
研究チームは3,156の言語のcolexifucationに関するデータベースであるCLICSを用い、複数の感情表現の言語を分析し、言語概念を緻密に結び付ける「colexification ネットワーク」を構築しました。
このネットワークは、さまざまな言語のcolexifucationの有無を参考に、感情に関する概念を頂点とし、関連性が高い概念には重みづけを与えることで構築されています。
分析の結果、「GOOD(良い)」「BAD(悪い)」「LOVE(愛)」「WANT(欲しい)」が、感情表現の複雑なネットワークの中心ハブとして機能することを発見しました。
つまり今まで基本的感情として考えられてきた怒りや悲しみ、幸福などの感情は、これらの4つの感情から派生している可能性があるということです。
また研究チームは「GOOD」と「BAD」の関連性においてより詳細な分析を行っています。
分析の結果、「GOOD」と「BAD」の両方に関係がある概念として、「BIG」「ANIMAL」「WHITE」「SICK」「SMALL」「BRAVE」の6つの単語があることが分かりました。
たとえば、英語の「SICK」は一般的に「病気の」や「不快な」などの否定的な意味合いを持っているイメージがありますが、「かっこいい」や「素晴らしい」などの肯定的な意味も持っています。
このようにcolexifucation ネットワークは、概念間の類似性と関連性の両側面を加味することで、異なる概念の関係性を調べることができるのです。
研究チームは「感情に関連する概念は、自然言語処理、特に感情分析の分野で重要な役割を果たしている。この分析手法は、単語、文章の意味の肯定的・否定的な方向性を識別できると考えられ、言語分野でのさまざまな応用が可能になるだろう。」と述べています。
応用の例として、異文化コミュニケーションが挙げられるでしょう。
文化の差を超えた中心的な感情の存在を特定することで、会話の際に生じる感情表現を相手により正確に伝達したり、共感のすれ違いを少なくすることができるかもしれません。
また自然言語処理をより深く理解することは、言語処理アルゴリズムや大規模言語モデル(LLM)の開発にも役に立ちます。
市場調査からSNSまでユーザーの言葉の背後にある感情をより正確に汲み取る、ほかには文章を書く際に相手に伝わりやすい感情表現を提案をしてくれるかもしれません。
中心的な感情ハブを理解することは、新たな言語学基盤の創出する可能性を秘めていると言えるでしょう。