生き物の名前はだれが、どうやって決めているのか?
さて、シャチという生き物は「Orcinus orca(オルキヌス・オルカ)」、「Orcinus rectipinnus(オルキヌス・レクティピヌス)」、そして「Orcinus ater(オルキヌス・アータ」という3種類に分かれるそうです。
この英語っぽい名前はあまり親近感を覚えるものではありません。新しく分類されたシャチにも、カブトムシ、パンダ、マンタのように日本語の名前(和名)を付けてほしいものです。
しかし、この英語っぽい名前は動物の名前を考える上では避けて通ることはできない、超重要な名前です。
記事の最後に、生き物の名前の関するルールについて考えてみましょう。
全ての生き物には世界共通のラテン語の名前がつけられおり、それは「学名」とよばれます。
例えば、我々ヒトという動物には「Homo sapiens (ホモ・サピエンス)」という学名があります。
同様にカブトムシには「Trypoxylus dichotomus」、ホオジロザメには「Carcharodon carcharias」という学名があります。
気が付いた方もいるかもしれませんが、学名は日本人の名前でいう「名字 + 名前」というように、二つの要素から成り立っています。このようにして学名を書くことを「二名法(にめいほう)」などと呼び、前半は「属名」、「後半」は種小名といいます。
この学名のルールに従ってシャチの名前をみてみましょう。
Orcinus rectipinnusの場合、Orcinusが属名、rectipinnusが種名にあたります。次にOrcinus aterの場合、Orcinusが属名、aterが種名になります。
属名が同じなのは一目瞭然です。これがなにを意味するかのかというと、この2種は非常に似た動物であるということです。つまり、Orcinusというグループの中に、rectipinnusと aterという種がいるということです。
生き物の名前はこのように入れ子状になっており、学名の表記方法を詳しく学ぶと、どの生き物同士が近い仲間なのかすぐにわかるようになります。
ちなみにこの学名、いったいだれが、どうやって決めているのでしょうか?
その答えは「その生き物の暮らしや姿を詳しく記載し、そして学名を提案することを目的とした”記載論文”を書いた人」が決めています。雑に言うと、記載論文を書く早い者勝ちで決めています。
学名が便利なことはわかりましたが、ラテン語ネイティブではない人にとっては覚えにくいため、やはり日本語の名前(=和名)が欲しくなります。
では、和名はいったいだれが、どのように決めているのでしょうか?
実は和名の決め方には、学名ほどしっかりとルールがきまっておらず、研究者たちの間で慣習的に使われている名前が、そのまま和名になるというケースが多いようです※2。
※2ただし一定のルールを定めている場合もあります。例えば、日本魚類学会では生き物の和名に差別用語(例えば、”コビト”や”イザリ”などは使用禁止です)を含めてはならないなどを定めています。
今回新たにOrcinus rectipinnusとOrcinus aterが新たな種として記載されましたが、まだ和名は決まっていません。
ですが、実はこの2種、日本の北海道近海に生息していることが分かっています。
加えて、日本では名古屋港水族館と鴨川シーワールド、そして2024年に開園する須磨シーワールドではシャチが飼育されています。
私たちのなかにはこれから、水族館や観光地、そして図鑑やネットにてシャチを目にする人がたくさんいるでしょう。そのとき、Orcinus rectipinnusとOrcinus aterはどのような和名で記載されているのでしょうか?
今後シャチについて解説している記事をみつけた際には、ぜひ新しい学名と和名をチェックしてみてください。
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