多様性が多様性を加速させる真逆のパターン
生命の進化は、新種の誕生と絶滅が絶え間なく繰り返される過程です。
どの種が生き残り、どの種が消え去るかは予測しにくいものですが、このプロセスは完全にランダムではありません。
特にグループのレベルでは、一定のパターンが存在しています。
この進化のパターンは、次のように進行します。「まず共通の祖先が現れ、その後、その環境に適応しながら多様化が進み、やがて進化の限界に達し、多様化が頭打ちになる」という流れです。
例えば、ダーウィンが研究したフィンチの場合、共通の祖先が島に飛来した後、ナッツを割るための大きなくちばしを持つ種や、特定の昆虫を捕食するために小さなくちばしを進化させた種が出現しました。
これらの種がそれぞれの食料源に適応すると、多様化が一段落し、新たな種が現れることが少なくなります。
環境適応が一通り完了すると、例えば大きなくちばしを持つ個体の数が種内で増加するような変化が主流となり、「新種」が出現する必要性が低くなります。
このようにして、生物多様性の限界が生じ、多様化が停止します。
そして食べられなかった木の実を食べることができるようになるなどの種内変化が起きると、それまでその食料を独占していた他の種との競争が生じます。
あるいは、食料不足により雑食だった種が新たな食料源(大きなくちばしが有利な大きな木の実など)を求めるようになることもあります。
体の変化が起きなくても、主食のシフトは起こり得ます。
最終的には、これらの変化が種間の競争を激化させ、敗れた種が絶滅に向かうことがあります。
つまり「共通先祖の出現➔多様化➔多様化の限界➔種間競争の激化➔絶滅する種の増加」となるわけです。
このような種間競争による絶滅は、環境変化によるものとは異なる性質を持っています。
研究では、この進化のパターンが特に脊椎動物に普遍的であることが示されており、逸脱は主に環境の変化によってのみ説明されます。
そこで今回、ケンブリッジ大学の研究者たちは、このパターンが人類にも当てはまるかどうかを調べて見ました。
調査ではまず、人類の種の誕生時期と絶滅時期が特定され、種の多様性の増加と絶滅のパターンが調べられました。
化石記録は常に正確とは限らないため、データモデリングを使用して最も妥当な時期を予測しました。
すると人類種全体ではおおむね他の動物と同じく「共通先祖の出現➔多様化➔多様化の限界➔種間競争の激化➔絶滅する種の増加」というパターンが存在することが判明します。
しかし、私たちホモサピエンスが含まれるホモ属では、このパターンが異なります。
ホモ属では多様化がさらなる多様化を促進する現象が見られました。
研究者たちは、ホモ属の進化パターンは、種間競争が新たな種を出現させる原動力となっており、これが他の脊椎動物とは逆の現象であると述べています。
さらに、このような異常なパターンは島に生息する昆虫や植物にも見られることが分かりました。
これは、限られた環境での異常な進化が起こることが以前から知られているためです。
研究者たちは、ホモ属で「多様性が多様性を加速させる」という現象が起きた原因として、既存の種が残っている中で人類が新天地へと進出し続けたことを挙げています。
また、このような異常なパターンを単に環境変化で説明するのは難しく、テクノロジーの導入が重要な役割を果たしていると指摘しています。
テクノロジーの使用は体を進化させることなく環境に適応できるため、新種の出現を抑制するかのように見えますが、同時に新しい環境を創出し、新種が出現しやすくなる側面もあります。
特に、火の使用や狩猟採集の技術は、環境を変えずに環境へのアクセス方法を変化させることで、実質的に環境変化を引き起こしました。
これにより、ホモ属の種間競争はさらに激化し、他とは異なる新種の増加に貢献したのです。
他の人類種も火や石器の使用が可能でしたが、ホモ属ほどテクノロジーに依存していなかったため、同様の効果は見られなかった可能性があります。
しかし、このテクノロジーに依存した新種ラッシュは、ある圧倒的な種の出現によって台無しになってしまいます。
その痕跡は新種出現パターンより絶滅のパターンに現れていました。