売春の法的扱いは国によって異なる
売春の規制は依然として世界的に議論されている問題であり、法的な扱いも国や州によって様々です。
例えば、アメリカの50州ではほぼ全面的に売春が禁止されていますが、唯一ネバダ州だけでは合法となっています。
同州の都市ラスベガスの街中やホテル内で売春することは罪になりますが、州内の10カ所のカウンティ―(郡)が認めたエリアで売春の斡旋業を営むのは完全に合法です。
こちらはネバダ州にある「チキン・ランチ」という売春宿。
また欧州でも売春が合法化されている国がいくつかあり、ドイツ、オランダ、デンマーク、ベルギー、スイス、オーストリアなどでは売春の斡旋が認可制となっています。
その一方で、こうした売春の合法化に断固として反対したのがスウェーデンです。
スウェーデンでは1999年に、性的サービスの従事者を保護する目的で「売春禁止法」を導入しました。
これにならい、近隣のノルウェーやアイスランドも同じような法制度を導入し、売春を刑罰化しています。
また、日本でも売春行為は基本的にすべて違法です(売春防止法第3条)。
ただ、ここで争点とされているのは売買春をする本人たちではなく、これを勧誘・斡旋する周辺関係者の取り締まりです。
日本では年齢や性別を問わず、売春を行うことは禁止されていますが、主にその処罰対象は売春を管理している人間であり、売春を勧誘した場合は6か月以下の懲役または1万円以下の罰金、売春を斡旋した場合は2年以下の懲役または5万円以下の罰金が科せられます。
つまりこの法律の目的は、売春を強要される被害者がでないようにすることなのです。
そのため売春を法的に認可するにせよ禁止するにせよ、識者たちが問題の争点としているのは「売春の規制によって性犯罪にどのような影響が現れるか」という点なのです。
特にスウェーデンモデルの支持者たちは、売春を法的に禁止することで治安が改善され、強姦のような性犯罪も減少するはずだと考えています。
しかし本研究主任のリカルド・チャッチ(Riccardo Ciacci)氏は「従来の研究の多くは、売春の合法化が強姦犯罪に与える影響を調べたものばかりであり、売春の刑罰化が強姦発生率に与える影響についてはほとんど知られていない」と話します。
そこでチャッチ氏は、売春を全面的に禁止しているスウェーデンを対象に新たな調査を行いました。