天の川銀河の発見と宇宙の形
銀河とは、誰もがよく知る通り数万を超える大量の星々が集まった領域のことです。
わたしたちの属する太陽系は、天の川銀河の中にあります。
この事実を発見したのは18世紀イギリスの天文学者、ウィリアム・ハーシェルでした。
ハーシェルは天体はすべて同じ明るさで輝いていると考え、明るさの違い=距離の違いという考え方から観測した星をプロットし、地球がパンケーキ型の星の集まりの中にあるということを発見したのです。
ハーシェルはその後、メシエカタログを手に入れて同様に星雲の観測も行い、メシエを超える数千もの星雲を発見しました。
星雲の中には1つだけ星の輝きと思えるものが見つかることがあり、ハーシェルは、星雲が宇宙で塵などの集まった雲であり、1つの星雲からは1つの星が生まれてくるのだと考えました。
現代でも星雲(分子雲)が星の種であり、これが重力的に集まることで恒星が誕生すると考えられています。
そのため、ハーシェルは18世紀の人物でありながら、かなり現在の理解に近い推測をしていたのです。
しかし、彼の考えでは星雲はすべて天の川銀河の中にあり、その外には天体はないだろうと考えていました。彼は天の川銀河が宇宙で唯一無二の銀河だと信じていたのです。
一方、18世紀ドイツの哲学者イマニュエル・カントは宇宙には天の川銀河に匹敵する巨大な銀河がいくつもあると考えていました。
このとき彼は銀河のことを「島宇宙」と表現したそうですが、天の川も島宇宙の1つであり、星雲とは天の川の外に浮かぶ他の島宇宙なのだと主張したのです。
その根拠としてカントは、星雲のスケッチの多くが楕円形になることを上げました。天の川銀河はパンケーキ型の円盤をしています。これを斜めに見れば楕円に見えます。
そして霧や雲のように見えるのは、その距離が想像を絶するほど遠いため、大量の星の光が滲んでいるからだと説明したのです。
これは現代から見れば銀河に対する非常に正しい解釈でした。
ただ、こうした考え方をカントができたのは、観測事実以外に彼の神学的な信念も関係していました。
カントは神がこの宇宙にたった1つの銀河しか作らなかったとは考えられなかったのです。宇宙は無限であり巨大な銀河も宇宙には無数に浮かんでいる。それがカントの考える神の作りし世界の姿だったのです。
銀河は我々の天の川が唯一無二なのか、宇宙ではありふれた天体なのか? 星雲ははるか彼方の銀河なのか、天の川の中にある塵の雲なのか?
以降、ハーシェルとカント、どちらが正しいのかという議論は世紀をまたいで長く続くことになります。