宇宙はどこまで広いのか?銀河間の距離測定法の発見
天の川銀河は宇宙で唯一の銀河なのか? 天の川銀河の外にも宇宙は広がっていて他にも銀河が存在しているのか? この論争は意外なほど長く続き、20世紀になってもまだ決着が付きませんでした。
それは遠い天体との距離を測る方法がいつまで経っても見つからなかったためです。これについては、ほとんどの天文学者があきらめムードになっていました。
しかし、1912年アメリカの女性天文学者ヘンリエッタ・スワン・リービットがその問題を解決させます。

リービットは現代では女性天文学者として伝えられていますが、実は当時天文台で雇われていたただのパートタイマーでした。
パソコンもなかった当時、観測した膨大な天体写真を整理するのは大変な作業で、ハーバード天文台では女性パートタイマーを雇ってその整理をさせていました。
リービットはそんなパートタイマーの一人で、毎日大量の天体写真乾板を整理してカタログ化していたのです。そしてその作業を行う中で、彼女はマゼラン雲(銀河だが当時はまだ星雲と考えられていた)の領域に映る星の中に何百日もの時間をかけて明るさが変化している星があることに気づきます。
これ自体はセファイド変光星と呼ばれるもので、別段特別なものではありませんでしたが、彼女は膨大な写真乾板の整理をするなかで、このセファイド変光星をマゼラン雲の中に複数見つけ、それを比較したとき明るさの変わる周期が同じ星は同じ明るさであり、周期が長いほど最大輝度が明るくなることに気づくのです。

マゼラン雲の領域に見つかったセファイド変光星はだいたい地球から同じ距離にある星と理解することができます。そのためリービットの気づきは、変光周期が同じセファイド変光星は同じ明るさで光っていることを示していました。
宇宙の距離を測るのが難しいのは天体がそれぞれバラバラの明るさで輝いているためです。
もし同じ明るさで光る星を特定できた場合、見える明るさの違いから両者の距離を比較することができます。なぜなら明るさは距離のニ乗に比例して減衰していくからです。

セファイド変光星の輝度と周期の法則を発見したことで、リービットは遥か遠くの天体と地球に比較的近い星(天の川銀河内の星)の距離を比較する方法を世界で初めて示したのです。
ただリービットの時代はまだ観測精度が低く、天の川銀河内のセファイド変光星の距離自体も測定できていなかったので、彼女の発見を利用してマゼラン雲までの距離を正確に測るということ自体はまだできませんでした。
この発見から、遠い星の距離の測定に初めて成功したのは世界一有名な宇宙望遠鏡の名前にもなっているアメリカの天文学者エドウィン・ハッブルです。

ちなみにハッブルは星雲が遠い宇宙にある別の銀河だという説を支持していました。
1923年頃、ハッブルは繰り返し繰り返し「M31アンドロメダ星雲(この時点ではまだ星雲だと考えられていた)」の撮影を行っていました。
ある日、彼は天候が良かったので少し露光時間を伸ばしてアンドロメダ星雲を撮影してみました。すると写真の中に明るく輝く星が映っていたのです。
彼は最初それを「新星」だと考えました。しかし他の写真と見比べたところ、それがセファイド変光星であることに気づいたのです。

星雲の中にセファイド変光星を発見したということは、リービットの研究を使えば、その星雲との距離を測ることができます。
ハッブルの時代には、観測技術はかなり発展しており「視差法」(年周視差)などから正確に天の川銀河内のセファイド変光星の距離(数百光年)が測定されていました。
ハッブルは観測データとリービットの研究データ、そして自身が撮影したアンドロメダ星雲を比較してその距離を計算してみました。
その結果アンドロメダ星雲はおよそ90万光年の彼方にあるとわかったのです。
天の川銀河の直径はおよそ10万光年です。これはアンドロメダ星雲が天の川銀河の外、はるか彼方に存在することを示していました。
そして、そんな遠い天体が雲のように見えるということは、それがガスや塵の雲ではなく、無数の星々が集まって輝く別の銀河であることを意味しています。
発見の翌年ハッブルはこの事実をアメリカ天文学会へ報告し、天の川銀河が宇宙で唯一の銀河なのか? その外にも銀河が無数に浮かんでいるのかという宇宙の構造に関する長い論争に決着をつけたのです。
1924年のことでした。
こうして1771年にメシエによってカタログの31番目の星雲として記録されていた天体アンドロメダが、実は銀河だったということが明らかになったのです。
こんな長い経緯があったため、今でもメシエカタログに記録された天体は銀河なのに星雲と呼ばれることがあります。
今では、メシエカタログに記録された多くの星雲が、実は銀河であったことが分かっています。その一覧はNASAのページで見ることができます。
天文学の歴史に思いを馳せながらメシエカタログの天体を眺めてみると、今までと違ったロマンを感じられるかもしれません。
ちなみにウルトラマンの故郷M78星雲は本当にただの星雲です。しかし、これは台本の印刷ミスだったと言われていて、本当の設定ではウルトラマンの故郷はM87星雲なのだそうです。
M87星雲は、私たち天の川銀河も含めた100以上の銀河が集まる「おとめ座超銀河団」の中心となる楕円銀河です。
こっちのほうが確かにウルトラマンの故郷に相応しい感じがしますね。この勘違いも、銀河のことを慣習的に星雲と呼んでしまっていたことが問題だったのかもしれません。
この記事は2020年12月掲載の記事を、加筆修正して再掲載しているものです。
「星雲」と「銀河」の2つの名前があるのかについての具体的な説明が無く、非常にガッカリな記事だ。 タイトルに偽り有りの釣り記事か?
読めばわかると思うんだけど
説明されてますよ
宇宙戦艦ヤマトでの14万8千光年先のイスカンダル星はアンドロメダ星雲にあるとされていたのは間違いって事になるんですね
大マゼラン星雲と言ってたはずですよ
イスカンダル星は大マゼラン星雲(銀河)にある惑星です。
アンドロメダ星雲(銀河)にあるのはガトランチス(白色彗星帝国)の本拠地ですね。
天体の距離を測る方法が分からなかったのに、なんで天の川銀河の直径がわかってたんだろ?
実際は違うと言えばスターゲート(劇場版)に出てくるアビドース(劇場版では天の川銀河ではなくて違う銀河の星です、ドラマ版では天の川銀河の星です)とスターゲートアトランティスに出てくるペガサス銀河の地球からの距離が違うらしいですね。