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天日干しすると「香水の匂い成分」が発生
研究主任で化学者のシルビア・プグリエーセ(Silvia Pugliese)氏は、幼少期に母親が天日干しした洗濯物の心地いい匂いが忘れられず、その正体を知りたいと考えて、この研究を始めたと話します。
実験ではまず、IKEAの綿製タオルを用意し、匂いに影響を与える微生物や塩分を含まない純水で3回すすぎました。
そして同大の建物を借りて「暗い室内」「ベランダの日陰」「ベランダの直射日光の下」の3カ所に干します。
こうして乾かしたタオルを袋に入れて15時間密封し、タオルから放出された化学物質を採取。
比較として、何も入っていない空の袋や洗濯していないタオル、それからタオルを干した場所の空気も同様の手順で集め、ガスクロマトグラフィー質量分析で匂い成分を分析しました。
プグリエーセ氏によると、主観的には明らかに天日干ししたタオルで最も強く「お日様の匂い」を感じたといいます。
そして分析の結果、直射日光の下で干したタオルからのみ、香水の原料としても使用される化合物のアルデヒドやケトン、香辛料のカルダモンに含まれるペンタナールが検出されたのです。
さらには、柑橘系の爽やかな香りのもとになるオクタナール、バラのような香りがするノナナールなども見つかりました。
こうした化合物が「お日様の匂い」の正体だったのです。
どうして天日干しで「いい匂い成分」が発生するのか
プグリエーセ氏は、天日干ししたタオルからこれらの化合物が発生した理由について「空気中のオゾンガスや日光の働きのおかげ」だと考えています。
具体的には、濡れたタオルの素材と空気中のオゾンガスが反応することで、アルデヒドやケトンが生成されるという。
それから、濡れタオルに含まれる水滴が虫眼鏡のように機能して太陽の紫外線を集光し、それによりタオル中の化学物質が活性化して、匂い成分の合成が促されるとのこと。
またタオルに含まれる顔料や染料も太陽光を吸収して化学変化を起こすことが知られています。
氏によると、こうした化学反応は雨後の草むらなど多くの場所で発生しているそうですが、特に天日干ししたタオルから香りやすいのは、綿の繊維が匂い成分を閉じ込めて保持しやすくなっているからと指摘します。