格闘家は引退後メタボになりやすい
急速減量の悪影響は現役時代だけにとどまりません。
セルビアのノヴィ・サド大学に所属し、格闘家の急速減量に関する研究成果を数多く発表しているパトリク・ドリッド教授らの研究グループが2024年に発表した研究があります。
この研究では、セルビアの元エリート男性アスリート150名を現役時代の競技をもとに、次の2つのグループに分けた上で、メタボリックシンドロームの有病率(prevalence)を比べています。
・急速減量群:柔道、柔術、空手、キックボクシング、テコンドー、ボクシングの元格闘家で、現役時代に3回以上の急速減量をした経験がある
・対照群:水泳、サッカー、ハンドボール、陸上競技、ボート、水球など、現役時代に急速減量をしなかった元選手
その結果、メタボリックシンドロームの有病率は急速減量群で有意に高くなっていました。
なお、この研究におけるメタボリックシンドロームとは、腹部肥満、高血糖、高トリグリセリド血症、低HDLコレストロール血症、高血圧または降圧剤の常用という評価項目に3つ以上当てはまることです。
元格闘家のメタボリックシンドロームの有病率が高い理由について、ドリッド教授らは、若い頃から体重を急激に減らした経験を持つ者は、年を重ねたときに健康に悪影響が生じやすいと指摘しています。
より具体的には、現役時代に繰り返される飲食物の制限が引退後の代謝機能に不利益をもたらしたり、過度な脱水症状が心臓や血管へのリスクを高め、メタボリックシンドロームに関連する諸問題につながったりする可能性です。
一般人であっても、無理なダイエットをすると、脂肪を蓄積しやすい体質に変わると言われますが、格闘家の体にも同じようなことが起こるのかも知れません。