運動がもたらすのは“筋力”だけじゃない?
私たちの体には、筋肉から分泌される「マイオカイン(myokine)」というたんぱく質があります。
これは、筋肉の収縮にともなって血液中に放出され、体のさまざまな場所に信号を送る働きを持っています。
その中でも、研究者たちが今回注目したのが「CLCF1」というマイオカインです。
CLCF1はもともと免疫や神経の発達に関係していることが知られていましたが、筋肉や骨における役割については詳しく検証されていませんでした。
研究チームはまず、若年層(20代)と高齢者(70〜80代)の筋肉の遺伝子発現データを比較し、運動によってどのようなたんぱく質が増減するかを詳しく分析しました。
その結果、CLCF1は若い人では運動後に血中濃度が上昇するのに対し、高齢者ではそもそもの濃度が低く、運動してもあまり増えないということがわかりました。
これはつまり、CLCF1の分泌量は年齢とともに減少し、運動しても十分に増えない可能性がある、ということです。
次に研究チームは、CLCF1が実際に筋肉や骨にどのような影響を与えるかを確かめるため、マウスを使った実験を行いました。
老化したマウスに対して、CLCF1を注射し、握力や走行能力、骨密度、筋肉の太さなどを測定したのです。
さらに、CLCF1の分泌量を遺伝的に高めた「CLCF1トランスジェニックマウス」も作成し、その長期的な効果も調査しました。