男性アスリートの場合、統計学的に寿命に良い種目は棒高跳びと体操
長生きすることが健康なのかは、人それぞれの価値観によりますが、研究界では、平均寿命や死亡リスクといった指標が客観的な健康度を測るために広く用いられています。
寿命は遺伝という変更不可能な要因だけでなく、運動、食事、心理的な要素など、生まれてからの生活状況にも大きく影響されることが知られています。
適度な運動を定期的に行うことが、平均寿命や死亡リスクに良い影響を与えることはよく知られていますが、オリンピックや世界選手権に出場するようなトップアスリートの場合はどうなのでしょうか?
今回、研究グループはWikipediaやWikidataの公開情報を基に、トップアスリートの出生日、死亡日、性別、国、スポーツ種目に関するデータを大量に収集しました。
その際、テニスとバドミントンを「ラケットスポーツ」として統合するなど、必要に応じて広いカテゴリーに分類しました。
そして、トップアスリートの寿命を一般層と比較するために、世界銀行の平均寿命データを活用し、性別、国、時代の影響を考慮しながら分析を行いました。
早速結果を見ていきましょう。
分析対象者の95%以上が男性の元アスリートだったため、まずは男性の結果を見てみます。統計的に、最も長寿に関係する種目は棒高跳びと体操で、約8年の寿命延長が見られました。
その他にも、フェンシング、陸上競技の混合(複数の種目に取り組んだ者)、野球なども寿命が長い結果が得られました。
研究グループは、有酸素運動と無酸素運動が組み合わさるスポーツに取り組む人たちの寿命が長い傾向があることを指摘し、持久力の向上や血圧、体脂肪率の低下、筋肉量の増加、高い骨密度など、健康面でのさまざまな利益に結びついていると考察しています。
このような視点は、トップアスリート以外の運動好きにも参考になります。
実際、別の研究でも、有酸素運動(例:ジョギング)と無酸素運動(例:筋力トレーニング)の両方を取り入れることで、どちらかを単独で実施するよりも健康面に好影響が期待できることが分かっています。
一方で、分析の結果、寿命にマイナスの影響を与える可能性のある種目もあることが分かりました。
次のページでは、寿命に悪影響を及ぼす可能性のある種目や女性の元トップアスリートの結果を見ていきます。