短期的な利益と長期的な損失
一口に格闘家といっても、その競技種目やプロアマ、出場する団体などの違いによって計量から試合までの間隔などの事情は異なります。
例えば、柔道の公式計量は大会前日に行われるものの、抜き打ち(ランダム)で大会当日にも計量が行われます。
抜き打ちで選ばれた場合、規定体重の5%を超えていると失格になってしまうため、水抜きに頼り過ぎることは難しくなります(水抜きによって失われた体重は水分を摂るとあっという間に戻ります)。
一方、総合格闘技を主催する多くの団体は、前日計量を採用している上、当日の体重制限(俗にいう「戻し制限」)もありません。
そのため、総合格闘家の多くは体重の5%を超える急速減量をした上で、試合時には計量とは別人に見えるような体格で試合に挑む者も多いのです。
少し前にはなりますが、イギリス放送協会のインターネットテレビチャンネルであるBBC Threeで放映されたドキュメンタリーでは、計量まで24時間を切ってから約7kgを一気に落とす格闘家の姿が放送され、海外で大きな反響を呼びました。
競技種目にもよりますが、高い筋肉量を持つ格闘家にとって急速減量は、試合の勝敗という観点から見るとアドバンテージになり得ることは事実です。
そのため、目先の勝利を優先する場合、急速減量は妥当な行為と言うこともでき、その是非は競技や引退後のキャリアへの捉え方によって変わるという側面もあります。
しかし、長期的な視点で見ると、行き過ぎた急速減量は自縄自縛の行為と言えるのです。
格闘家に限らず、男女ともに若い頃に見た目を気にして無茶な減量をする人もいますが、格闘家の生涯を追っていくとそれが人生後半まで続くリスクを伴っていることがわかるでしょう。
無理な減量は健康を犠牲にする行為であることをしっかり意識する必要があります。