海王星の衛星
1846年の海王星が発見されたときに衛星トリトンも同時に見つかっています。
海王星の衛星は全部で14個見つかっていますが、その中でもトリトンは変わり者で、海王星の自転とは逆向きに公転しています。
惑星の自転と逆行して公転している衛星は木星や土星にもありますが、トリトンほど惑星に近く、かつ大型の衛星で逆行する軌道をもつ衛星は太陽系には他にありません。
この原因については、トリトンが海王星とは別のところで生まれた天体であり、後から海王星の重力に捕らえられて衛星になったためだと考えられています。
火山を持つ衛星としては、木星の衛星イオがよく知られていますが、トリトンにも火山があります。
トリトンの火山は、「氷の火山」または「低温火山」と呼ばれています。
「氷の火山」は水やアンモニア、メタンなどの揮発性の物質を火山のように噴出する現象です。地球の火山では、内部の熱で融けた岩石がマグマとして噴出しますが、トリトンの火山が噴出しているのは主に窒素です。
トリトンでは表面が窒素を含む氷でおおわれているため、内部の熱が岩石から表面の氷に伝わり、窒素の氷から昇華した窒素ガスが噴出しています。このような火山活動は、太陽からの遠い表面温度の低い天体で見られるので「低温火山」ともいわれます。
トリトンの赤道付近にはマスクメロンのような亀裂による模様がみられます。
これは氷の地殻が膨張と収縮を繰り返してできたものです。クレータがそれほど見られないことから比較的新しい地形と考えられています。トリトンの内部には放射性物質の崩壊による熱が存在し、この熱が氷の地殻を膨張させ、亀裂を形成する要因となっている可能性があります。
トリトン全体には希薄な大気が取り巻いていますが、その成分は主に窒素だと考えられています。
ところで、地球の衛星である月は地球から1年に2~3cmずつ遠ざかっていますが、これに対してトリトンは海王星に近づいいることがわかっています。
この原因は月と異なり、トリトンが海王星の自転の向きと逆向きの逆行軌道で公転しているためです。
この現象は次のように説明することができます。地球と月の場合、月の引力(潮汐力)によって地球の海面が盛り上がります。地球の自転は月の公転よりも速いため、潮の膨らみは月よりも少し前に位置します。これにより、月は地球の潮汐の膨らみから引っ張られる力を受けます。この力によって月の公転が加速され、公転の遠心力が強くなり月は地球から遠ざかります。
海王星とトリトンの場合、トリトンが海王星の潮汐で変形した部分から力を受けますが、逆行しているためトリトンの公転は減速されます。その結果遠心力が小さくなりトリトンは海王星に近づいていくことになるのです。
では最終的にトリトンは海王星に墜落してしまうのでしょうか?
現在の予測では、海王星に近づきすぎたトリトンは、いずれその潮汐力で引き裂かれバラバラに砕けてしまうと考えられています。
その後、トリトンの破片は海王星を取り巻く美しい環となることでしょう。実際にそんなことが起きるのは、何億年も先の遠い未来の話ですが…
海王星は太陽系の最も外側に位置する惑星のため、観測が難しく多くの謎が残されています。
将来的には海王星の観測に特化した探査機が送られるかもしれません。海王星の大気や磁場、衛星系などの詳細な調査は、太陽系の形成や進化に関する重要な知見をもたらすと期待されています。
いやあ、宇宙って面白いなあ!! ^ – ^