海王星には海がある?
海王星の英語名であるネプチューン(Neptune)は、ローマ神話の海の神ネプトゥーヌスに由来しています。その名の通り、海王星は深い青色をしており、まるで海が広がっているかのようです。
しかし、残念ながら海王星の青い色は海の色ではなく、大気や雲の色です。
海王星の大気の主な成分は、水素が約80%、ヘリウムが約19%、メタンが約1.5%です。天王星が青く見えるのは、大気に含まれるメタンが赤色の光を吸収するため、残った青い光が反射されるからです。
天王星の大気にもメタンが含まれていますが、天王星の色は緑がかった薄いシアンなのに対して、海王星は明らかに青い色をしています。2つの惑星には同じようにメタンが含まれているので、同じような青色になってもいいはずですが、明らかに色合いが異なる理由はなんでしょうか?
最近の研究によれば、天王星よりも海王星の方が青く見える理由は、主に両惑星の大気中に存在する「もや」の層の厚さの違いによるものです。天王星の大気には厚い「もや」の層があって、微粒子によって光が反射されるため青色が薄まって見えます。海王星の大気にも「もや」の層がありますが、天王星に比べて薄いため、青色がより強く見えます。
研究チームが想定したモデルは、3層のエアロゾルから構成されています。エアロゾルとは微粒子を含んだ気体のことで、色に影響を与える重要な層は、2層目の中間層です。
海王星の大気は天王星より活発なため、大気の動きによってメタン粒子が中間層にかき集められ、メタン雪として下方に降下していくため、「もや」が取り除かれやすくなっています。
海王星の大気が天王星より活発な理由は、海王星の表面温度が高いためです。
高いと言っても太陽から遠く離れた海王星の表面温度の平均は約 -218℃(55K)で、極寒であることに違いありませんが、それでも太陽に近い内側の軌道を回る天王星の表面温度(平均約 -224℃(49K))と比べると、わずかに高いのです。
この違いが、よく似た2つの惑星の大気の動きに影響していると考えられます。
では海王星の表面温度が高い理由としては何が考えられるでしょうか?
まずは、温室効果について考えてみましょう。海王星の大気の主成分は水素やメタンで構成されています。メタンは二酸化炭素よりも高い温室効果があるため、温室効果によって表面温度が上昇している可能性があります。
次に考えられるのは、重力収縮による発熱です。惑星の上層部にある物質が中心部に落下した時に重力による位置エネルギーが熱エネルギーに変わります。その熱が表面に伝わって表面温度を上昇させているのかもしれません。
さらに、中心核にある放射性物質が熱源となっていることも考えられます。地球内部の岩石にはウラン、トリウム、カリウム40などの放射性物資が含まれています。これらの物質は崩壊までの期間(半減期)が長く、崩壊した際に放出するエネルギーが大きいため、現在も地球の内部が高温に保たれています。
海王星の密度は木星型惑星の中で最も大きく、氷と岩石で構成されたコアも大きいはずなので、そこに含まれる放射性物質の量も他の星よりも多い可能性があります。
内部に熱源があるためか、海王星は天王星と比較しても表面に見える大気の活動が活発です。
海王星は太陽系で最も強い風が吹いていて、最大風速は秒速600メートルに達します。海王星の大気には雲のような構造がたくさんあり、大暗斑のような長寿命の嵐がたびたび発生します。
大暗斑の正体は高気圧性の渦で、大きさは地球の直径とほぼ同じです。
大暗斑は1989年に探査機ボイジャー2号が海王星に接近したときに発見されました。しかし、その後1994年にハッブル宇宙望遠鏡が観測したときには大暗斑は消えていました。さらに数カ月後にはまた新しい暗斑が現れています。
大暗斑は、木星の大赤斑よりは寿命が短いようですが、これは海王星の大気がダイナミックに変動している証拠だといえます。