地球の内核の自転が遅くなっていると判明
内核の大きさは月よりもやや小さい程度であり、私たちの足元から約5000キロメートル下に存在しています。
地球の内核は主に固体の鉄とニッケルで構成された球体であり、液体の鉄とニッケルから外核の中央に浮かぶように存在しているとされています。
地球の内部はドロドロと「溶けている」との印象を抱きがちですが、本当の中心部は硬い金属の球体でできているわけです。
このような内核の情報は主に地震波を使った研究により明らかにされてきました。
地球表面の地殻で起きた地震波は地球内部にも伝達されます。
振動の伝わり方は対象が固体か液体で大きく違うため、地震波を複数の地点で分析することで、内核が固体で外核が液体であることがわかります。
そのため地震データは地殻やその下側のマントルだけでなく、内核や外核を調べる際にも重要な役割をしているのです。
そこで今回、南カリフォルニア大学の研究者たちは、地震データを利用することで、地球内核の回転速度を調べることにしました。
調査にあたっては1991年から2023年の間に南極付近で発生した121回の地震データが用いられました。
この場所では何年にも渡り同じような地震が繰り返し起きており、地球内部を探査するソナーのような役割を果たしてきました。
通常の地震の場合、震源地を中心に震度などが記録されます。
しかし今回の研究において地震波が測定されたのは、上の図のように、地球の裏側にあたる北極に近い場所でした。
南極で起きた地震を北極で観測することで、地震波が内核部分でどのように変化したかを調べることができるのです。
さらに研究では自然な地震に加えて、核実験によって発生した地震波も活用されました。
すると、意外な事実が判明します。
地球の内核の回転は2008年までは表面に比べて早かったものの、2008年を境に逆に遅くなっていたのです。
上の図はその様子を簡単に示したもので、AからBが2003年から2008年の内核が表面に比べて速く回転してることを示しており、BからCは2008年から2023年にかけて内核の速度が表面に比べて遅くなっていることを示しています。
先にも述べたように内核の周囲は液体のため、内核の自転速度(角速度)が表面部分と違っていても、そのギャップで地球が砕けてしまうことはありません。
しかし地震波を調べるだけで、なぜ内核が減速していることがわかったのでしょうか?