なぜ地球の内核は減速しているのか?
内核を通過する地震波には、内核のどの場所を通ったかによって、ある種の特徴を持ちます。
同じ場所で発生した地震が同じ内核の場所を経由して記録された場合、その特徴は似たものになります。
もし内核が表面に固定された不動の状態であるならば、同じ場所で起きた地震から観測される特徴はおおむね同じものになります。
しかし実際の地震波を調査すると、その特徴が少しずつ変化していることが判明します。
さらに数十年のスパンでデータを分析すると、同じ特徴を持つ地震波が再び現れることが明らかになりました。
研究者たちは年月を経て現れた同じ特徴を持つ地震波を「ペア」と呼びました。
上の図は、ある年に観測された特徴と同じものが観察された年を記録したものになります。
左側の線の上に並ぶ点は内核が早かった時期のもので、右側の線の上に並ぶ点は内核が遅くなった時期のものです。
この研究者たちは「このペアが存在こそが、早かった内核が徐々に後退していく過程を示している」と述べています。
また過去のデータをもとに内核の速度変化を予測すると、内核の速度変化はおよそ70年の周期を持つ可能性が示されました。
さらに2008年を基準に前半と後半を別けると、前半と後半で速度変化が2.5倍も異なることが判明します。
つまり、みかけの速度がプラス100からゼロになるのに5年とすると、ゼロからマイナス100になる期間は12.5年かかっていたわけです。
また過去のデータを分析することで、内核の速度の変化にはおよそ70年の周期がある可能性が示されました。
しかしそうなると気になるのがその原因です。
研究では、主な原因が重力の不均衡にあると述べています。
地球の外核やマントル部分の密度は意外なほど不均一であることが知られています。
たとえば2023年に行われた研究では、月が作られる原因となった原始地球に衝突した惑星テイアの異物が、地球内部に不均一に分布していることを示しています。
研究者たちは、このよう不均一な外側の密度分布は不均衡な重力を発生させ内核の速度に影響を与えるのではないかと推測しています。
研究者たちは今後継続的にデータを収集し、内核の速度変化の長期的な推移を調べていくと述べています。